「Linuxに注力し始めたことが、既存製品に対しても好影響を与えている」。米ノベルで経営戦略を担当するラルフ・リンサラータ上級副社長はこう語る。例えば、同社の独自OSであるNetWareの採用をやめる顧客が減ったという。「Linuxへの注力を発表する前までは、年間11%ほどの顧客がNetWareの採用をやめていたが、現在は4%を切るまでになった。NetWareは当社の製品売り上げのうち3分の1を占めるため、この影響は大きい」(同氏)。

 この理由をリンサラータ上級副社長は「NetWareの将来に対する不安が払拭されたため」だと述べる。「NetWareユーザーの多くは製品自体に不満はなかったが、将来性に不安を感じていた」(同氏)。その不安が減少したのは、2004年1月に完了した独スーゼ・リナックス買収の影響が大きいという。

 NetWareは今年中にも出荷予定の次期バージョン「Open Enterprise Server」で完全にSUSE LINUXと統合する。Open Enterprise Serverはカーネル部分とサービス部分からなる。カーネル部分がSUSE LINUXになり、サービス部分にNetWareで培ってきた技術を投入する。

 NetWareに代わるOSとしてSUSE LINUXを選択した理由は「独スーゼ・リナックスよりも先に買収していた米ジミアンの創業者、ミゲル・デ・イカザとナット・フリードマンの提案」だという。ノベルは、ジミアンを買収した2003年8月の時点では、自社でLinuxディストリビューションを販売することは考えていなかった。「ジミアンを買収した最大の理由は2人の創業者の技術力や影響力が欲しかったからだ。ジミアンが所有していたデスクトップ・ソフトやシステム資源管理ソフトは利益に大きく貢献しているわけではないが、今後に期待している」とリンサラータ上級副社長は話す。

矢口 竜太郎=日経コンピュータ