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 テレビ朝日は6月、パソコンをシンクライアント端末に置き換えるために「ブレードPC」を導入した。ブレードPCは、米クリア・キューブの「CLEAR CUBE」を採用。まずは約130台分を導入し、将来的には社内にある約3000台のパソコンをすべてブレードPCで置き換える。導入作業は日立システムアンドサービスが担当した。

 ブレードPCは、プロセサ、メモリー、ハードディスクなどパソコンと同じ部品をブレード状のボードに搭載したもの。ユーザーの手元には専用の接続装置「C/Port」があり、キーボードやマウス、モニタ、USB機器を接続。接続装置とブレードの間は、LANケーブルを利用してデータをやり取りする。ただしTCP/IPではなく、独自のアナログ信号を利用しているため、ブレードと接続装置を1対1で接続する必要がある。既存のLANとは併用できない(図[拡大表示])。

図●テレビ朝日が導入した
ブレードPCの概要

 テレビ朝日社内のパソコンは、5年前まで約300台だったが、現在は約3000台に増えた。台数が急増したのに合わせて、管理の手間も増大していた。「遠隔操作ができるクライアント管理ツールなどを導入していたが、パソコンの修理のために各部署に出向くことが多かった」(テレビ朝日の上田昌夫総務局情報システム部副部長待遇)という。

 現場で修理ができない場合は、予備パソコンと入れ替えるが、「入れ替え作業に2~3時間かかり、その間業務でパソコンが使えなくなるという問題があった。パソコンが各部署にある以上、管理の効率化には限界があった」(上田氏)と振り返る。

 こうした問題を解決するために、テレビ朝日はブレードPCの導入を決めた。同社は以前、Windows-Based Terminalの導入を検討した時期があった。しかし「動画や音声の利用に制限があった。テレビ局の業務上、ストリーミングの動画を問題なく見られる必要があった」(上田氏)と話す。

 クリア・キューブのブレードPCは、独自のアナログ信号で、画面やキーボードから入力した信号をやりとりする。「ブレードPCは従来のパソコンと同じ機能を利用でき、操作上の反応速度もなんら変わらない」(上田氏)という。

 テレビ朝日がブレードPCを全社導入するときは、各階にある空調付きのEPS(エレクトリック・パイプ・スペース)に設置する予定。同社のLANはEPSを中心にして、各部屋のデスクまでLANケーブルをスター状に配線しており、これを流用する。仮に各部屋でスイッチなどを利用している場合、ブレードPCと1対1で接続できるよう、LANケーブルの配線を変更する必要がある。

 ほかにもブレードPCを導入するメリットは多い。ブレードPCは管理コンソールを操作するだけで、予備のブレードに切り替えることができる。故障した場合は、瞬時に予備のブレードに切り替えられる。データは移行できないが、「業務上重要なデータは、2重化しているファイル・サーバーに保存することを勧めている」(上田氏)。オフィスの机上に設置する接続装置は21cm×3cm×13cmと小さく、クライアント・パソコンを設置していたときと比べるとスペースを大幅に削減できる。

 同社が採用したブレードは1枚当たり約25万円程度。「通常のPCより高いが、管理コストを削減できることを考えると、トータル・コストはさほど変わらない」(上田氏)とみている。

 ブレードPCでは各クライアント(ブレード)にアプリケーションをインストールするのも容易である。「アプリケーションをクライアント/サーバー型にしても、ソフトをインストールしてまわる手間が少なくて済む。各ユーザーに合わせたアプリケーションを開発しやすくなる」(上田氏)と期待している。

坂口 裕一=日経コンピュータ