神戸市で開催された会見の様子。
左から、マイクロソフト 執行役公共
インダストリー統括本部長の大井川
和彦氏、同社執行役最高技術責
任者の古川享氏、兵庫県の井戸
敏三知事、兵庫県教育委員会の
武田政義教育長

 兵庫県は6月4日、マイクロソフトの支援を受けて、遠隔教育の導入やオンライン教材の開発を進めると発表した。県内にある約150の県立高校、約1400の小中学校の情報化を進める。教材作成などにかかる教師の負担を軽減し、一人ひとりの生徒に合った教育を実現しやすくする狙いだ。

 6月中に、通信制の県立青雲高等学校(生徒数約1900人)を皮切りに、複数の県立高校で遠隔教育の実証実験を開始する。PowerPointやWindows Mediaを使って教材を作成し、生徒が自分のペースで授業を受けられるようにする。一方、小中学校では教材の作成や成績管理といった、学校の事務作業の情報化を進める。今後3年間で、延べ1800人の教員を対象にトレーニングを実施する。

 兵庫県は「ひょうごe-スクール構想」を掲げ、全ての県立高校を光ファイバで結ぶなど教育のインフラ整備を進めてきた。昨年8月には、県の参与を務める西和彦氏が井戸敏三知事を伴って米マイクロソフトのビル・ゲイツ会長に面会し、直々に協力を取り付けた。アスキーを退社後、兵庫県の須磨学園高等学校や埼玉県の尚美学園大学で教育に携わってきた西氏は、「現在の教育現場の問題は、教師が教材作成やテストの採点、成績管理といった業務に追われ、生徒指導に割く時間が作れないこと」という。これが、授業についていけず、中退する生徒を生む一因となっている。

 また、「数学などの科目では、1年生の1学期でのつまずきが、その後3年間にわたって尾を引くことが多い。いわゆる“落ちこぼれ”を防ぐためには、頻繁に小テストを実施し、生徒の理解度を把握することが有効。だが、現実には採点や集計などの負担が大きく、教師がやりたがらない」(西氏)。そこで、兵庫県は今後、オンラインで簡単にテストを実施し、自動的に採点や集計できるシステムを開発し、授業に導入することを検討している。

 遠隔授業についても、通信教育制でない一般の学校への導入を図っていく。「学力に問題がないにも関わらず、同級生などとの人間関係のもつれから、不登校になる生徒が多い。こうした生徒が学校に復帰するまで、継続的に学習を支援するシステムとして、遠隔授業は有効だ」(西氏)。

 マイクロソフトは、県内各地の学校や研修施設に社員を派遣して、日本の教育現場の事情に合った教育支援システムを開発していく。ここで得たノウハウを基に他県への展開を図る狙い。システム開発に要する金額は明らかにしていない。

本間 純=日経コンピュータ