「米国の企業はほとんどLinuxクライアントは使っていない」。米ヒューレット・パッカード(HP)のマーティン・フィンクLinux担当副社長はこう語る。HPが米国企業にLinuxクライアントを大量導入した事例も皆無だという。こうした状況は「日本でも同じ」(同氏)である。

 フィンク副社長によると、企業ユーザーがLinuxクライアントを使わない理由は二つあるという。まず、企業はWindowsを搭載したクライアント・パソコンを長い間使っており、Linuxに置き換えるのは移行や再教育にかかるコストが大きすぎる点。もう一つは、ワープロや表計算などのメジャーなアプリケーションはLinuxでも利用できるようになってきたが、日常の業務に使う小さなアプリケーションはまだLinuxへの対応が遅れている点である。本来、Linuxを推進する立場の同氏がこうした発言をすること自体、Linuxクライアントの普及の難しさを物語っている。

 ただ、Windowsがまだ十分に普及していない国に対しては、HPはLinuxクライアントを積極的に売り込んでいく計画だ。アジアでは中国やインド、加えて東欧が市場として有望だという。

大森 敏行=日経コンピュータ