資生堂は6月1日、CRM(顧客関係管理)システム「新ボイスネットC」を稼働させた。新ボイスネットCは、商品に関する問い合わせや、消費者向けに開催する美容セミナーの参加者の反応などを一元管理し、全社で活用するためのシステム。従来システムよりもデータの検索時間を短縮したほか、顧客対応の均質化を目指すための機能強化を図った。

 資生堂には電話や手紙、電子メールなどによって年間53万件以上の顧客の声が寄せられる。新システムには、これらの情報をすべて蓄積しておく。コールセンターや百貨店の店頭、商品企画の担当者は、「日付」や「商品カテゴリ」、「ブランド」、「内容(『クレーム』、『通常の問い合わせ』など)」といった切り口で、新システムに格納された情報を多面的に検索したり分析する。そうすることで、問い合わせ対応や接客、新商品開発に役立てるのが狙いだ。

 新システムでは、検索速度を従来システムより向上させ、検索結果を瞬時に表示できるようにした。情報検索や分析に必要なすべての機能はWebブラウザから利用できる。1996年から利用していた旧システムは、情報を閲覧する一部の機能を除いてクライアント/サーバー型を採用していたため、パソコンに専用クライアント・ソフトを導入する必要があった。

 機能面でもさまざまな強化を図った。最大の特徴は、情報の検索・分析結果に加えて、「その情報にどのようにたどり着いたか」という検索・分析の手順を社内の関係者に配信できるようにしたこと。例えば、百貨店の営業部門マネジャが「期間」を指定したうえで「商品カテゴリ」を特定して、ブランド別の顧客のクレーム件数を分析したとする。新システムでは、その分析手順と結果を部下に配信できる。分析結果を詳しく調べたい場合は、マネジャが実施した手順を引き継いで、作業をさらに進めることができる。

 検索・分析手順まで配信できるようにしたのは、社員によって検索や分析の結果にバラツキが出るのを防ぐため。新システムの開発を牽引した田中亮成お客さまセンター課長は、「情報を活用するやり方が担当者によって異なるようだと、例えばお客様への対応の質を均一にしにくくなる。結果として、ブランドに対する信用力が下がる恐れがある」と語る。

 資生堂は同日、コールセンターへの顧客の問い合わせ内容を音声認識して、自動的に要約するシステムの検証も始めた。検証の結果、問い合わせ内容を正しく要約できれば、新ボイスネットCに自動的に格納して活用できるようにする。

 新ボイスネットCはNTTデータと共同で開発した。NTTデータは同日、コールセンター向けソフトとして発売した。

栗原 雅=日経コンピュータ