「BI(ビジネス・インテリジェンス)を実現するには、社内の全員が同じツールを使って、同じデータを分析しなければならないという、間違った理解をしている人がいる」。こう指摘するのは、BIという言葉の生みの親であるもある、米ガートナーのバイスプレジデント兼ガートナー フェローのハワード・ドレスナー氏(写真左)だ。

 「BIの定義は、企業で働くあらゆる人が情報を分析し、分析結果を業務に生かすこと」と、ドレスナー氏はあらためてBIとは何かを語る。「特定のソフトウエアを導入すればできるものではない。まして、全員が同じツールを使わなければならないなんて、おかしい」と続ける。BIの実現という本来の目的が、ソフトウエアやツールの導入という手段にすり替わってはいけないと指摘しているわけだ。

 それらが分かったうえで、社内でBIを成功させる秘訣をドレスナー氏は、「社内にBI専門の組織を作ることと、ガバナンスをしっかりすること」と語る。BIの専門組織は、ITを知る人、データ分析の手法に精通した人、そして社内業務を知っている人から構成する。米国ではすでにBIの専門組織を持つ企業があるという。専門組織に加えて、「企業の戦略を明確にして、戦略に従ってBIを利用するように指揮する担当者が必要だ。この担当者はCIO(最高情報責任者)が向いている」とドレスナー氏は話す。

 またドレスナー氏は、「最近、BIが注目されている」と指摘する。その理由は大きく二つあるという。一つは、分析対象となるデータが多く蓄積されるようになったこと。「特にERPパッケージやCRMソフトといった業務アプリケーションは、導入した後に蓄積したデータを分析してこそ意味がある、ということに多くの企業が気づき始めた」(ドレスナー氏)。

 もう一つの理由は、外部環境からの圧力。企業間競争が厳しくなり、データを分析するニーズが高まっている。また、米エンロンの事件以降、経営データの詳細な開示が企業にとって必要不可欠になっているからこそ、「企業の現状を把握できるシステムへの需要が高まっている」(ドレスナー氏)。

 なおBIの日本での普及についてガートナージャパンの栗原潔リサーチ バイスプレジデント(写真右)は、「日本はITの導入が米国より2~3年遅れていると言われるが、BIは他の分野に比べると遅れていない方だ。特にここ2~3年は前年比20~30%の勢いで導入企業数が増えている」と話す。

島田 優子=日経コンピュータ