「IDE(統合開発環境)であるEclipseが2001年11月に公開されてから現在に至るまで、Webサイトからのダウンロード件数は1800万に上る。Eclipseがここまで成功するとは思わなかった」。米IBMのソフトウエア・グループでデスクトップ開発ツールを担当するリー・ナックマン副社長はこう語る。ナックマン氏は、2001年のEclipse.org(今年2月に非営利団体Eclipse Foundationに組織変更)というコンソーシアムの設立にIBM代表として参画した。

 「Eclipse.orgを設立したきっかけは、設計、コーディング、テストといったシステム開発作業に必要なツール群が独立していて、うまく連動できなかったからだ。開発に必要なツール群を同一のプラットフォームで動かしたかった」と、ナックマン氏は振り返る。

 Eclipseが開発者に広く受け入れられた理由をナックマン氏は、こう分析する。「まずEclipseの設計段階から開発まで一貫して、拡張性を保てるようにしたこと。これにより異なるツール群を同一のプラットフォームで動かせるようになった」。このほか、開発ツールとしての使いやすさを重視したことやオープンソースにしたことなどを、ナックマン氏は成功の理由として挙げる。

 Eclipseは開発ツールだけでなく、アプリケーションの実行環境としても使われるようになった。日本IBMが今月17日に発表した「Lotus Workplace 2.0」はWebブラウザから利用するオフィス・アプリケーションだが、アプリケーション実行環境としてEclipseを採用している。「約1年半前、Eclipseの開発に参画していたメンバーのなかから、Eclipseのユーザー・インタフェース技術をアプリケーションに役立てられないかというアイデアが出てきた。そのアイデアが、リッチ・クライアントを実現するためのプラットフォーム作りに発展した」(ナックマン氏)。

 「本来開発ツールに役立てようと始めたコミュニティのなかから、アプリケーションの実行環境に生かそうという斬新なアイデアが出てきた。このようなアイデアは、コミュニティの規模が大きければ大きいほど出てくるもの。これぞオープンソース・コミュニティの醍醐味だ」とナックマン氏は強調する。

 ナックマン氏はIBMでRational SoftwareのCTO(最高技術責任者)を兼務している。「開発期間を短縮させる製品として、Rose XDEというUMLツールを提供している。今後は、UMLを知らないシステム利用部門の担当者でも、簡単にモデリングができるような仕組みを提供していきたい」と意気込みを語る。

西村 崇=日経コンピュータ