雑誌協会など5つの協会・組合で構成する日本出版インフラセンター(JPO)とICタグ関連ベンダー13社は5月14日、UHF帯ICタグを使った実証実験の結果を公表した。

 主な実験内容は、(1)UHF帯ICタグの読み取り精度の検証、(2)UHF帯ICタグと13.56MHz帯ICタグの読み取り距離および読み取り角度を比較、(3)UHF帯と近い周波数を利用する携帯電話に電波干渉しないかの検証、の三つ。講談社の永井祥一営業企画室販売開発部部次長は、「UHF帯ICタグは、読み取り精度や距離、角度ともに期待通りの良い結果が得られた。携帯電話の電波干渉もなかった」と実験結果を語る。

 (1)の読み取り精度では、書籍数が多く、文庫本のように書籍が小さいほど読み取り精度が低くなることが分かった。読み取り精度は30%~100%とばらつきがあったが、これはICタグを読み取るアンテナを1枚しか使っていないため。1枚しか使わなかったのは各条件で測定条件を同じにするためだ。「アンテナを2枚使えば読み取り精度は100%なる」(講談社の永井部次長)。

 (2)の読み取り距離は、13.56MHz帯ICタグが25~50cmだったのに対し、UHF帯ICタグは1~5mだった。読み取り角度は13.56MHz帯ICタグが角度によってはまったく読み取れないこともあったが、UHF帯ICタグはまんべんなく読み取れた。(3)の携帯電話への影響は実証実験ではみられなかった。携帯電話の電波がICタグの読み取りに影響を与えることもなかった。

 今回の実証実験はUHF帯ICタグの読み取り精度など、基本的な項目を検証した。2004年秋から始める新たな実証実験では、製本時にどうICタグを貼り付け、どういうワークフローで運送し、店頭でどのようにICタグから得られる情報を使うかといった実業務に即した実験内容になる予定だ。それに先駆け、JPO内にあるICタグ研究委員会に「装着ワーキング・グループ」や「利活用ワーキング・グループ」を設置した。

 2004年度の実証実験では、万引きされた本が新古書店に流通するのを防ぐための実験にも取り組む。講談社の永井部次長は、「リサイクルブックストア協議会などと協力して、ICタグに代金支払済みの情報がない書籍を買い取らないといった仕組みを作っていく」と語った。

松浦 龍夫=日経コンピュータ