NTTデータは5月10日、2004年度(2005年3月期)から2006年度(2007年3月期)までの中期計画を発表した。「100億円以上の大型案件や公共や金融に偏っていた事業構造を大幅に転換し、2006年度の決算では連結売上高1兆円を目指す」。発表の席で、浜口友一社長はこう宣言した。

 「当社は大規模システム事業に頼りすぎている。しかし、今後は大規模システムの需要が低くなるとみている。また、当社の売り上げ比率を見ると、公共が41%、金融が29%で合わせて7割を占める。しかし、IT市場では公共、金融以外の一般企業のシステム需要が大部分を占めており、実勢と合っていない」(浜口社長)。そこで、NTTデータは中期計画で、5億~100億円の案件や一般企業向けの案件を増やす。「今こそ抜本的な対策に打って出る時期だと判断した」と、浜口社長は強調する。

 中期計画は、売り上げを伸ばすための「成長施策」と「企業体制の見直し」の2本柱で構成する。成長施策は、(1)法人営業の強化、(2)先進的ソリューション・サービスの開発、(3)次世代基幹システム構築基盤の開発・整備の3点。今後3年にわたり、これらの成長施策に毎年150億円を投資する。

 (1)には毎年20億円を投資。年間1000人前後の通常採用に加えて、特定の業種や業務に関する知識を持つ担当者を中心に200人前後を中途採用する。(2)では、「米ウォルマート・ストアーズのリテール・リンクのような業界の中心となるシステムや、ICタグを利用したプラットフォームの開発など、先進的な技術に毎年70億円を投資する」(浜口社長)。(3)では、オープンソース・ソフトを利用したシステム基盤の「Prossimo」やメインフレームと同等の信頼性を確保するシステム基盤の「PORTOMICS」の開発に毎年60億円を投資する。

 企業体制の見直しについては、システム構築体制の見直しや販売管理費の効率化などを掲げている。システム構築体制の見直しでは、プロジェクト・マネジャを2004年度末までに1000人育成するほか、EA(エンタープライズ・アーキテクチャ)やUML(統一モデリング言語)といった「工学的なアプローチを拡大する」(浜口社長)。販売管理費の効率化では、事業を継続するために必要な定常的な販売管理費と、成長のために必要な施策費を整理したうえで、定常的な販売管理費の削減を実施する。2003年度と比較して、2006年度までに販売管理費を約2ポイント低減することを目指す。

 NTTデータが中期計画で大規模な事業転換を打ち出した背景には、2003年度(2004年3月期)の決算が増収減益だったことがある。同社の2003年度売上高は、連結で前年比1.8%増の8467億円と増収。ところが本業の利益を示す営業利益は597億円と、同3%減の減益となった。

 井上裕生取締役財務部長は、減益の理由を「当社が得意とする大型システムの更新が谷間を迎え、受注が減った。加えて、システムの受注価格の下落が大きいからだ」と説明する。「公共、金融といった業種やシステムの規模に関係なく、顧客から価格低下の圧力が強まっている。競争も激化しており、予定した価格を下回って受注する案件もある」(井上財務部長)。

 2004年度はさらに厳しく、売上高は前年比2%減の8300億円、営業利益は同41.4%減の350億円を見込んでいる。井上財務部長は、「来年度が“底”ではないかと考えている」と見解を示す。

 NTTデータは新たな中期計画を施行することで、2006年度までに売上高1兆円、営業利益750億円を狙う。「営業活動の基礎体力を向上しつつ、当社の強みである技術力にみがきをかけ、競合他社に差をつける」と、浜口社長は意気込みを語った。

島田 優子=日経コンピュータ