NECは4月28日、2003年度(2003年4月~2004年3月)の連結決算を発表した。連結の売上高は、前年度比4.5%増の4兆9068億円、営業利益は同51.1%増の1826億円だった。純利益は前年度に比べて656億円増加し、410億円だった。金杉明信代表取締役社長は(写真)は、「いずれの指標も計画値を達成し、2000年以来、3年ぶりのプラス成長になった」と強調した。

 しかし主力のITソリューション事業では懸念材料が残る。売上高は計画通り1%増の2兆988億円だったが、営業利益は昨年度の1058億円から917億円に減少した。特にITソリューション事業のうちSI/サービス事業において、「新技術を使ったシステム構築」が難航し、利益率の悪化を招いた。

 「新技術を使ったシステム構築」の例として金杉社長は、放送局向けに開発した地上デジタル放送の送出システムを挙げた。「地上デジタル放送の送出を制御するマスター系システムはコンピュータの塊。お客様である放送局側もNECもデジタル放送に必要な要求仕様を明確にできないまま、プロジェクトをスタートさせた」と説明する。地上デジタル放送の開始日は決まっているため、NECは「相当なリソースを投入して、なんとか間に合わせた」(金杉社長)という。

 こうした反省をもとに、NECは今年4月に「プロセス改革推進本部」を新設した。新技術を使ったときの開発遅延や開発コストの超過を避けるために、開発、生産、販売のプロセスを改革し、効率化を狙う。

 SI/サービス事業に関して、NECは2004年度を「横展開の時期」に位置づけている。「地上デジタル放送システムの地方局への導入が始まる。昨年度のノウハウやソフト資産の蓄積を生かして、利益率を改善していきたい」(金杉社長)。ITソリューション全体では2004年度に売上高が2兆1400億円、営業利益が約1100億円を予想している。

坂口 裕一=日経コンピュータ