米アベンテイルは5月4日、SSL-VPN装置「EX-1500」の機能拡張を発表した。「仮想デスクトップ」と呼ばれる技術などを使って、EX-1500に接続したクライアント・パソコンでの操作履歴や利用ファイルを、通信終了時に完全に削除する。クライアント・パソコンからの情報漏えいを防ぐことが目的だ。

 SSL-VPNとは、ブラウザのSSL(セキュア・ソケット・レイヤー)機能を使ってVPN(実質的な専用線網)を構築する技術。クライアント・パソコンに専用のソフトウエアをインストールしておく必要がないのが特徴で、主に外出先から企業内システムにアクセスする場合に利用する。使い勝手が良い半面、他人のパソコンやインターネット・カフェのパソコンなどで利用すると、パソコンに残った履歴やキャッシュ・データから重要な企業情報が漏れる恐れがある。

 そこでアベンテイルはEX-1500に、通信終了時にWebブラウザのキャッシュや通信履歴を消去する機能を追加した。さらに仮想デスクトップ技術を使い、EX-1500との通信の途中でローカル・ディスクに書き出した作業ファイルや文書ファイルはすべて暗号化し、通信終了時に削除する。

 同様の機能強化は、競合ベンダーも進めている。例えばノキアは、同社製SSL-VPN装置に、通信開始時にウイルス対策ソフトの有無をチェックする機能を搭載。6月までには仮想デスクトップ技術を使った情報漏えい対策機能を追加する。シスコシステムズは3月に米トゥウィンゴ・システムズを買収し、同社が持っていた仮想デスクトップ機能をSSL-VPN製品に取り込み、年内にもリリースする予定だ。

 アベンテイルのリチャード・ティン アジア・パシフィック担当ディレクタ(写真)は、「各社とも大枠のコンセプトは同じ。しかし、実装している機能に差がある。例えば、Internet Explorerのオートコンプリート機能で記録されたパスワードまで自動消去できるのはアベンテイル製品だけだ。仮想デスクトップ機能も、アベンテイルが他社に先駆けてユーザーに提供する」と自信を見せる。

 すでにEX-1500を導入しているユーザーは、新ファームウエア「Aventail ASAP7.1」に無償アップグレードすれば新機能を利用できる。EX-1500の価格は、同時接続ユーザー数が25までの場合で198万円。

福田 崇男=日経コンピュータ