「ここまでやってこれたのは、起業したのが地方だったから。地方ならではの“人のつながり”が都会にはないメリット」。新潟県長岡市のソフトハウス、アシーズの片岡忠久代表取締役はこう語る。

 同社は社員4人、売上高が2000万~3000万円の有限会社。中小ソフトハウスにありがちな大手メーカーの下請けはほとんどしない。8~9割をユーザー企業から直接受注し、安定して収益を伸ばしている。規模に反して長岡市ではちょっとした有名企業だ。

 好調の理由は人のつながりを大切にしたこと。現在はソフト開発を主業務にしている同社だが、創業から4年目の2002年までは、「ITに関する何でも屋」(片岡氏)だった。雑貨屋の顧客管理データベースの構築、ガラス屋へパソコンの搬入作業、小学校のパソコン教室講師など、どんな仕事でも顧客の要望に応えるように努力した。一度手がけた企業へは、その後も手厚くフォロー。「地方では噂がすぐ伝わる。よいことも悪いことも隠せないので、下手なことはできない」と片岡氏は正直に語る。

 「あの会社はよくやってくれる」。アシーズにとってよい噂が町内会、商店街などで広まるのに時間はかからなかった。顧客企業から別の企業にアシーズを紹介してもらえることもあった。こうして、継続的に仕事を得ることができた。

 現在では他県の観光案内用Webサイトの開発などを手がけている。2003年に、長岡市の観光案内用Webサイトを地場のソフトハウスと共同で構築した実績を買われた結果である。

矢口 竜太郎=日経コンピュータ