「他社のようにサービス漬けで製品を使わせるのではなく、顧客が真に望む製品を供給するだけ。それがうちのやり方だ」。米アドバンスト・デジタル・インフォメーション・コーポレーション(ADIC)北米ストレージ製品担当のスコット・ローザ副社長(写真右)はこう語る。同社は、オープン・システム向けテープ・オートメーション(自動テープ・バックアップ装置)市場でシェア世界第1位である。

 同社が強烈に意識する“他社”とは米ストレージテックのことだ。ストレージテックは、オープン系テープ・オートメーション市場で2000年までシェア1位を誇っていた。しかし2001年にADICがトップ・シェアを奪い、現在に至っている(米IDCおよび米ガートナーデータクエストによる)。ストレージテックは顧客にさまざまなソリューションを提供するため、大規模なサービス部隊を持っている。これがADICには「サービス漬け」と映る。これに対しADICは「顧客の望む信頼性、可用性、保守性を持つ製品の開発に注力している」(ローザ副社長)と製品自体の品質に自信を見せる。

 ADICの強みはほかにもある。「ストレージテックや米クアンタムといった競合メーカーは自社でテープ・ドライブも製造しているため、他社のドライブを採用しづらい」(ローザ副社長)という事情がある。これに対し、ADICはドライブを製造していないため、顧客の要望の高いドライブを自由に採用できるという。

 サービスよりも“製品そのもの”で勝負する、あるいは、基盤技術を自社で持たず業界標準技術を採用した製品を供給する、といったADICの戦略は米デルに通じるものがある。

 ADICは今後、日本市場への進出を本格化させる。そのために東京エレクトロンと販売代理店契約を締結したと4月14日に発表した。ADICアジア・パシフィック担当のジェフ・レボルド副社長(写真左)は「ADICは5年前に日本での販売を開始し、ずっとパートナーを探していた。東京エレクトロンはサービスが充実しており、顧客満足度が高く、SAN(ストレージ専用ネットワーク)構築の知識もある」と提携の理由を語る。東京エレクトロンはADIC製品を、製品単体とソリューションへの組み込みの両方で販売していく計画だ。

大森 敏行=日経コンピュータ