「本当はニーズがあるにもかかわらず、黙っていてはその市場が立ち上がらない分野」。防衛庁長官官房施設課の青木信義課長は9日、都内で開かれた「セキュアOSカンファレンス」で講演。セキュアOSについて、自らの考えを語った。セキュアOSはその名の通りセキュリティ機能を強化したOSで、Linuxベースの「SELinux」など、商用やフリーの製品が存在する。
現在、日本政府は安全なシステム基盤を構築するために、セキュリティを強化したOSの研究を続けている。青木課長は「政府としての施策や方針はまだ確立していないため、あくまで検討に携わってきた私個人の見解」と断ったうえで、セキュアOSの必要性を訴えた。
青木課長はセキュアOS普及の最大の問題の一つを、「専門家ではないユーザーにとって、理解しにくいこと」と指摘する。「(モノがOSであるだけに)利用する場面のイメージが描けないことが要因だ」(青木課長)。
続けて青木課長は「だから、セキュアOSの市場は自然発生的には立ち上がりにくい。こんな分野こそ、政府は市場の形成を促すなど、一定の役割を果たすべき」という考えを示した。具体策の例として、政府主導でセキュアOS製品の実証実験をすることなどを挙げた。
また青木課長はIT分野の研究開発について、国家として、より戦略的な検討が必要だという意見を述べた。「バイオテクノロジの分野では、研究開発の方策などかなり具体的な国家戦略が立案され、文書として公開されている。一方IT分野の研究開発については、抽象的な方向性が示されているに過ぎない。ITとバイオテクノロジを一列に並べて比較することはできないが、(戦略の深さの違いには)違和感を感じる」(青木課長)。