「これまで、開発を担当してきた新製品と、当社の従来製品を並べて見比べたことはなかった。だが、実際に並べてみると、新製品の設置スペースがこれほど違うのかと我ながら驚いている」。4月8日に開かれたネットワーク機器の記者発表会の場で、富士通IPネットワーク事業本部システムフロント事業部事業推進部の粕川雅之プロジェクト課長はこう語る。

 粕川課長が話すのは、新製品「IPCOM Sシリーズ」を使って構成したネットワーク(写真左)と、従来のネットワーク機器を使った場合(写真右)の設置スペースの差。従来の3分の1になった。IPCOM Sシリーズは、ルーター、ファイアウオール、帯域制御、負荷分散といった機能を併せ持つ製品。富士通は2年半をかけて、IPCOM Sシリーズを開発。4月14日の出荷にこぎつけた。スペースがコンパクトなだけでなく、ネットワーク構築に伴う面倒な作業を減らしたのが売り物だ。

 システム開発現場では、担当者がいくつものハードを組み合わせてネットワークを構築するのが一般的だ。機器同士をケーブルでつなぎ、ネットワーク運用に必要な設定作業を機器ごとに行う手間のかかる作業である。「いざ不具合が発生すると一つひとつの機器を検証する必要がある。ネットワーク構築を、なんとかシンプルにできないかと考えて新製品を開発した」と、粕川プロジェクト課長は振り返る。

 富士通の菊池伸行IPネットワーク事業本部長代理は、「IPCOM Sシリーズを使うと、当社の従来製品に比べて、必要なケーブルの本数は3分の1で済む。機器の価格は約半分程度。ネットワークの設計から機器の導入までの期間も5分の1に短縮できる」と説明する。

 IPCOM Sシリーズは、(1)ルーター、レイヤー7帯域制御、ファイアウオール、IPsec機能を搭載する「IPCOM S1000/S1200」と、(2)S1000/S1200にレイヤー7負荷分散、SSLアクセラレータの機能を加えた「IPCOM S2000/S2200」がある。価格は、80万円(S1000の場合)から。富士通は今後2年間で、IPCOM Sシリーズの4000台の販売を目指す。

(西村 崇=日経コンピュータ)