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IBMカナダのセリック氏 「UML(統一モデリング言語)の新版2.0の仕様が最終的に確定するのは、今年半ば。見通しとしては6月の終わりになるだろう」。IBMカナダ ソフトウエア・グループ ラショナル・ソフトウェアのブラン・セリック ディスティングイッシュド・エンジニア(写真)は、こう語る。

 UML2.0の仕様が、オブジェクト指向の標準化団体である米OMG(オブジェクト・マネジメント・グループ)で正式に採択されたのは昨年6月のこと。現在は、UMLツール・ベンダーや大学研究者がUML2.0仕様のレビューを進めている。IBMの代表としてOMGに参加しているセリック氏は、UML2.0の最終確定作業の調整役を務めている。

 「レビューの過程で受け付けた質問や課題点の指摘は700件に及ぶ。これらを仕様の修整などに役立ててきた」と、同氏は作業の苦労を語る。700件のなかには、重複した質問や指摘も含まれていた。それでもセリック氏は、「それらを基に仕様をチェックしていくことで、完成度をより高めることができる」と手ごたえを語る。

 UML2.0は、モデリングの結果を基にソフトウエアを自動生成する仕組みである「MDA(モデル駆動型アーキテクチャ)」を実現できるように、きめ細かい仕様策定がなされている。「UMLの図から正確にプログラムを生成するために必要な仕様があいまいだと、MDAの実現は難しい。そこでUML2.0では、MDAにかかわる部分は特に厳密に定義するよう気を配っている」とセリック氏は説明する。

 セリック氏は、UML2.0に基づくモデリング・ツール製品が市場に広く出回るのは、「最終版が確定してから、6~8カ月後くらいではないか」と予想する。その後、技術的なサイクルを考えると7、8年ほどの期間は使われるだろうと、セリック氏はみる。「利用していくなかで、モデリングの課題が出てくるはず。それを基にUML2.0仕様を修整していく。そのあとは、UML3.0が登場するのかもしれないし、別のモデリング言語が登場するかもしれない」(セリック氏)。

西村 崇=日経コンピュータ