「エンタープライズ・コンピューティングは、メーカー独自技術から標準技術への移行のまっただ中にある」。米デルのマイケル・デル会長兼CEO(写真)は3月26日、東京都内で開催した記者発表会でこう語った。同氏が言うメーカー独自技術とは米サン・マイクロシステムズや米IBM、米ヒューレット・パッカードの商用UNIXを搭載したサーバーであり、標準技術とはWindowsやLinuxを搭載したIA(インテル・アーキテクチャ)サーバーのことである。この流れに沿って、デル日本法人は5月に「UNIXマイグレーション・サービス」を開始する。

 このサービスの目的は、企業の既存のUNIXサーバーをIAサーバーに移行することで、UNIXサーバーの維持管理にかかる多額の費用を削減する点にある。日本法人のエンタープライズ システムズ マーケティング本部エンタープライズ ソリューション グループの多田和之本部長は「企業が過去、メインフレームからUNIXサーバーに移行した際には、アーキテクチャが異なるため、実際には膨大な移行コストがかかった」と語る。「これに対し、UNIXサーバーからIAサーバーへの移行ははるかに簡単だ」(同氏)。米オラクルのデータベース管理ソフトや独SAPのERPパッケージ(統合業務パッケージ)は、商用UNIX向けの製品に加えWindows/Linux向けの製品もあるため、ハードウエアとOSだけを入れ換えれば済むからである。

 移行サービスの内容は主に三つ。一つ目が、サーバー移行の前段階としてのデータ移行である。保守費用の高い大規模ストレージからDell/EMCブランドの安価な中規模ストレージに移行する。二つ目が、ERPやデータベースといったパッケージ・アプリケーションのプラットフォーム(サーバー/OS)移行である。三つ目が、ユーザー企業が開発したカスタム・アプリケーションのプラットフォーム移行だ。サービスの開始と同時に、Webサイト上にこのサービス専用の問い合わせ窓口「Dell Solution Online」を設置する。

 ただ、IAサーバーにはRAS(信頼性、可用性、保守性)の面でどうしても不安が残る。そこで、今年後半の早い時期に新しい運用・保守サービス「プラチナサービス」の提供を開始する。従来からある運用・保守サービスである「シルバーサービス」や「ゴールドサービス」は、障害後に対応するリアクティブなサポートだった。一方、プラチナサービスは障害を未然に防ぐためのプロアクティブなサポートである。24時間365日の連続稼働を目指し、専任の「テクニカル・アカウントマネージャー」が定期的な打ち合わせ、レポート提出、サポート計画の策定を行う。エンジニアの常駐やトレーニングといった個別のニーズにも応える。

 同社によると、当面の主なターゲットはサンのSolarisサーバーだという。理由は、まず台数が多いこと。また、SolarisはIBMのAIXやHPのHP-UXとくらべて独自技術の部分が少ないため、Linuxに移行しやすいという面もある。

大森 敏行=日経コンピュータ