全日本空輸(ANA)と楽天は、両社のポイント・プログラムにおいてポイントを相互に交換するサービスを7月1日から開始する。3月25日に提携を発表した。ANAの大橋洋治社長(写真左)は、「男性顧客中心のANAマイレージクラブと女性顧客層の厚い楽天の間でポイントを交換することで、新たな顧客層を拡大できる」とする。楽天の三木谷浩史社長(写真右)は、「マイルという強力なポイント・サービスと相互に交換するのは、今までに例がない。これをテコに大きな成長をしたい」と、それぞれ期待を語った。

 一般的にポイント・サービスは、顧客を囲い込むために使われている。今回のように、ポイントを他社と相互交換して、顧客層の拡大を狙った取り組みは珍しい。「ポイント・サービスはマーケティング戦略の核となるもの。楽天もANAも思い切った判断をした」(楽天の三木谷社長)。

 これまで両社のポイント交換は、クレジットカードのポイントから一方的に楽天のポイントやANAのマイルに交換できるものや、ANAのマイルを電子マネー「Edy」に交換するものしかなかった。

 交換比率は、方向によって異なる。ANAマイレージクラブの1万マイルが楽天スーパーポイントプログラムでは1万ポイント(1万円相当)に交換できる。先行したEdyも、1万マイルを電子マネーの1万円相当に交換できていた。

 一方、楽天の100ポイントは、ANAの50マイルにしか交換できない。「キャンペーン内容によって、マイルはいろいろな使い道がある。価値の特定は容易ではない。とりあえず市場価格を考慮して決めた。ANAのマイルは魅力が高く、交換可能にするだけで楽天のポイントの価値が上がる」(三木谷社長)。

 ANAの大橋社長は、「楽天から交換したポイントをANAで使われると、(その分の費用をANAが負担するため)現金が出ていくが、顧客獲得の効用は大きいと判断した。リスクをとって効用を勝ち取る必要があるだろう」と説明した。両社とも、同程度の金額で、相互のポイント交換が進むと仮定している。

 なお顧客情報の管理については、「両社のポリシーで可能な限り管理し、提携で同意なしに顧客情報を交換することはない」と、ANAの大橋社長は説明した。

坂口 裕一=日経コンピュータ