NEC、NTT、日立製作所、富士通といった日本の大手ベンダーが、今年秋に山場を迎えるICタグの国際標準化活動に参加できず、“カヤの外”に置かれる公算が大きくなってきた。ICタグ関連技術の国際標準化団体「EPCグローバル」が、標準化作業に参加するための前提条件として、会員企業に厳しい知的財産権(IP)ポリシーを突き付けているためだ。決断までに残された時間は少なく、各社は苦渋の決断を迫られている。

 EPCグローバルは、米オートIDセンターの活動を引き継いで昨年11月に発足した団体。同団体は3月16~18日、フロリダ州オーランドで全体会合「EPCglobal Summit」を開催した。会議の席上、日本のベンダーがIPポリシーの見直しを求めたが、同団体の幹部は否定的な見解を示した模様だ。EPCグローバル側は、今後参加予定の企業も含めて130社以上が既に同団体のIPポリシーに同意し、契約書にサインしたことを高らかに誇った。

 EPCグローバルを主導する米ウォルマート・ストアーズなどの流通大手は、来年1月からICタグを大規模採用する計画をかねてから明らかにしている。このため、同団体はICタグやリーダー/ライター、ソフトウエアについて規格策定作業を急ピッチで進めている。今回の会議では、約10種類の規格を今年9月または10月までに策定する方針を示した。日本のベンダーが“バージョン1”の策定に加われない場合、その後の大きな機会損失が予想される。

 日本のベンダーは「調査期間が規格草案の作成後30日と短い」、「調査範囲がほとんどの関連会社に及ぶ」の2点を問題視しており、IPポリシーへのサインに踏み切れないでいる。しかし、欧米企業は続々とIPポリシーにサインしている。これまで日本の大手ベンダーと同様にEPCグローバルのIPポリシーに反対してきた米IBMも、今回ついに契約書にサインした。このことで日本のベンダーの立場はますます苦しくなった。

 なお、EPCグローバルの幹部は今回の会議で「ロイヤルティ・フリー(RF)がデフォルト」と明言。参加企業に関連特許を無償で提供することを求めた。IPポリシーの文面には、「参加企業が知的財産をロイヤルティー・フリー(RF)または無差別かつリーズナブルな価格(RAND)でEPCグローバルに提供すること」と記している。だが、実際にはRANDは例外的規定であることを口頭で示した。

本間 純=日経コンピュータ 米ボストン発