NECは3月17日、システムの運用監視を手がけるソフト製品群「WebSAM」の新製品を発表した。あらかじめ決められたルールに基づきシステム資源の増減や障害回復などを自動的に実行する「自律コンピューティング」を実現する中核製品である。同社の伊久美功一執行役員は、「運用業務の効率化やシステム資源の有効活用を支援できる」と新製品のメリットを強調する。

 新製品は大きく分けて二つある。一つはサーバーやストレージ、ネットワーク機器といったハードウエアへのソフトのインストールや設定変更を一元的に自動で実行する「WebSAM ProvisioningMaster」。もう一つは、ハードウエアやアプリケーションの稼働状況に応じて、システム資源を増強したり、監視システムに異常が発生した際に原因の分析・特定や対策を実行する「WebSAM ASManager」である。

 伊久美執行役員は「2004年度から3年間で新製品を合計600システム販売する」と意気込む。新製品を含む同社のミドルウエア「VALUMOウェア」全体では、「年間売上高を現在の100億円から3年後には300億円まで伸ばす」(寺尾実 システムソフトウェア事業本部長)と鼻息は荒い。

 ただ現時点では、NECの思惑通りになるかは未知数だ。まだ新製品は、本格的な「自律コンピューティングを実現するにはまだ発展途上」(伊久美執行役員)だからである。例えば、WebSAM ProvisioningMasterが管理できるサーバーやストレージは当面のところNEC製品だけ。オールNEC製品の顧客でなければ新製品のメリットを存分に享受できない。伊久美執行役員も「今後は他社製品も管理できるようにソフトを強化していく」と今後の機能強化の必要性を認める。

 寺尾本部長は、「WebSAM ProvisioningMasterが備える機能のうち、サーバーやストレージ、ネットワーク機器といったシステムの構成要素に対するリソース管理を一元的に実施できるソフトは業界初だ」と先進性を訴える一方、「今後1年間で(自律コンピューティングで先行する)IBMに追いつきたい」と本音を漏らす。

 価格は、WebSAM ProvisioningMasterのうち、OSやミドルウエアのインストールや設定変更を手がける「WebSAM ProvisioningMaster PF」が920万円から。業務アプリケーションのインストールを実施する「WebSAM ProvisioningMaster AP」は287万円から。WebSAM ASManagerは115万円から。出荷開始はWebSAM ProvisioningMaster PFとWebSAM ASManagerが4月21日で、WebSAM ProvisioningMaster APが6月末。

(大和田 尚孝=日経コンピュータ)