「午前0時、携帯電話向けWebサイトへの問い合わせ件数は最大に達する」――。モバイル・コンテンツ制作を手掛けるサイバードによると、こうした事実が分かった。同社は2月から、携帯電話向けWebサイトのユーザー・サポート業務の請け負い業務を開始。AOLジャパンやTSUTAYAオンラインなどが顧客である。サイバードがコールセンターを置く沖縄統合モバイルオペレーションセンターの石川淳一センター長は「携帯電話の世界では、通常のユーザー・サポートと全く違うノウハウが求められる」と指摘する。

 上のグラフは、携帯電話向けコンテンツを提供しているあるWebサイトに寄せられた、電話/電子メールによる問い合わせ件数の推移である。これを見ると、通常のコールセンターでは昼休み時間に問い合わせが多くなるのに対して、携帯電話向けWebサイトはピーク時の半分程度に過ぎない。問い合わせの約9割は電子メールによるものだ。

 携帯電話のユーザーはチャット感覚で電子メールを使う習慣が身に付いている。パソコン・ユーザーに比べて、待たされることに忍耐がなく、返信が少しでも遅れると“いらつく”傾向があるという。10代後半から20代前半のユーザーが中心で、「クレームの言葉は短く、きつい」(石川氏)。そこで、同社は1時間以内を目標として問い合わせに返信している。24時間、365日体制でコールセンターを運営し、問い合わせがピークを迎える深夜帯もカバーしている。

 さまざまな携帯電話固有のトラブルに対応できる体制も必要だ。缶飲料などのキャンペーンでは、壁紙や着信音をダウンロードできるWebサイトを用意する例が多くなっている。こうしたコンテンツは、画面サイズや搭載する音源の不適合によって再生できないといったトラブルが多い。そこで、サイバードは沖縄のコールセンターを中心に、約280種類もの携帯電話の実機を用意。いつでも動作確認できるようにした。

 「創業当初は他のコールセンター事業者にサポート業務を委託していたが、使い物にならなかった。携帯電話向けWebサイトの顧客サポートは従来のノウハウが通用しない」(石川氏)。同社は、自らが顧客サポートに苦労する中で培った経験を生かして、他社からの受注を拡大したい考えだ。今後は、AI(人工知能)により、自然な文章でFAQデータベースを検索できるソフトを提供することも検討している。

本間 純=日経コンピュータ