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ビジネスオブジェクツのギブソン上級副社長 「BI(ビジネス・インテリジェンス)の普及率はまだ低い。しかし、1980年代の“データベース革命”、1990年代の“ERP革命”に続き、これから“BI革命”が必ず起こる。今回企業統合に踏み切ったのは、BIベンダー最大手としての地位を盤石にして、第3の革命の波に乗ることが狙いだ」。仏ビジネスオブジェクツで戦略アライアンスとOEMグローバル・アライアンスを担当するビル・ギブソン上級副社長(写真)は、こう説明する。

 ビジネスオブジェクツは昨年12月、レポート作成ツール「CrystalReports」の開発元である米クリスタルディシジョンズを買収した。その結果、2003年第3四半期(7~9月)のライセンス収入は約1億1000万ドルに達し、BIツール・ベンダー第2位である米コグノスの約7000万ドルを大きく上回った。ビジネスオブジェクツは現在、社員数は4000人、顧客の数は2万4000社で、製品のOEM先は350社を超える。

 「クリスタルディシジョンズを買収するにあたり、両社の製品の重なりがどの程度あるかを精査した。その結果、コアな製品はほとんど重なっていないことがわかった。今年第4四半期までに、両社の製品を順次統合していく」とギブソン上級副社長は話す。

 クリスタルディシジョンズと統合後のビジネスオブジェクツが提供するBI製品は大きく、(1)経営者向け、(2)中間管理職向け、(3)現場向けの3種類に分かれる。(1)は業績を管理したり表示したりする機能で、もともとビジネスオブジェクツが強い分野。(2)はデータの検索や分析といった機能で、やはりビジネスオブジェクツが得意とするが、「簡易なOLAP(オンライン・データ分析)機能はクリスタルディシジョンズの製品であるCrystalAnalysisでカバーするのが適する」(ギブソン上級副社長)。

 (3)の現場向けは、エンドユーザーによるレポートの作成や受信機能を指す。ここはクリスタルディシジョンズが最も強い分野だ。「CrystalReportsはマイクロソフトの開発ツールであるVisual BasicやVisual Studioなどにバンドルして提供されており、多くのエンジニアになじみのある製品となっている。Fortune1000の企業はすべてCrystalReportsを使用しているほどだ。SAPやピープルソフトなどにもOEM提供しており、これまで手薄だったOEMビジネスの補強にもつながっている」(同)。

 ビジネスオブジェクツはこれから今年末にかけて、両社が持つ強みを生かす形で製品の統合を図っていく。まず日本で2月16日に、クリスタルディシジョンズ製品の最新版である「Crystal Version 10」の出荷を開始した。従来製品であるCrystalReports、CrystalAnalysis、さらにエンタプライズ向けレポーティング・プラットフォームのCrystalEnterpriseの機能や拡張性、安定性を強化した。CrystalEnterpriseは、今後統合される製品のプラットフォームとしての役割を果たす。これがCrystalブランドとして最後の製品になる。

 続いて今年第2四半期(4~6月)に、ビジネスオブジェクツ製品の新版「Enterprise 6.5」を出荷する。同時期に、Crystal Version 10とEnterprise 6.5を統合して利用できる「Crystal Integration Pack」を提供する予定だが、これは英語版のみ。今年第4四半期に出荷予定の「BusinessObjects 11」で、両製品は完全に統合される。来年第2四半期にはEnterpriseの新版6.x、第4四半期にはBusinessObjectsの新版12を出荷する。「当社は『No customer left behind』というポリシーを掲げている。移行ツールを提供するなどにより、既存ユーザーを置いてきぼりにすることはない。移行の手段とタイミングも複数選択できるようにする」とギブソン上級副社長は強調する。

田中 淳=日経コンピュータ