大手コンサルティング会社のアビーム コンサルティング(以下アビーム)は2003年10月から12月にかけて、「IT投資成功度調査」を実施した。その結果、過去3年間で実施したIT投資の成果について「期待通り」という回答は30%に過ぎなかった。一番多かった回答は「やや不十分」とする55%で、「期待以上」は0%という結果だった。この調査は一部上場企業を中心に1545社のIT部門が対象で、125社から回答があった。

 IT投資成功度調査の責任者を務めたアビームの木村公昭ディレクターは「期待通りという回答の割合は4割はいくだろうと予測していたが、それを下回った」と嘆く。さらに「多くの企業が積極的にIT投資をしながら、IT部門みずから、成果は不十分と感じていることが明らかになった」と続ける。

 アビームはこの調査で、「企業収益の向上」や「経営意思決定の迅速化」、「社内における情報共有」など16項目の目的別に、IT投資効果に対する評価を聞いた。その結果、「ビジネスモデルの刷新」や「利用部門の満足度向上」、「新規顧客の開拓」といった目的については、効果が「不十分」と「やや不十分」といったネガティブな回答が約7割を占めた。

 「IT投資効果が上がらない」という悩みは、多くのIT部門が抱えている。この“悲惨”な状況をただ数値で見せられただけではIT担当者は納得できない。そこで今回の調査では、投資効果で成功している企業とそうでない企業の違いも同時に探っている。

 そうした分析のため、アビームは先に挙げた投資目的16項目について独自に重み付けし、回答企業それぞれの「IT投資成功度」を数値化。それをもとに、IT投資成功度の高い企業の傾向を分析したところ、「企業業績(売上高営業利益率)がよければ、IT投資成功度も高くなる」(木村ディレクター)という結果を得た。

 さらにアビームは、「経営トップの関与」、「(IT投資の)事前評価の定量化・金額化」、「ユーザー満足度の把握」など5分野14項目の実施状況を質問した。その結果、IT投資に成功している企業は、「実行管理」と「十分な協議」の二つを共通して実施していることが分かった。実行管理とは、「情報化プロジェクトの実施状況を定量的または定性的に管理していること」である。十分な協議とは、「IT部門と利用部門で十分協議したうえで投資を発案」していることを指す。

戸川 尚樹=日経コンピュータ