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写真1●店員に代わり
携帯電話が接客
 携帯電話の画面から、バーチャル・キャラクタ「ナナコ」が話しかける。「今日はどんなお洋服がお好みですか」――。3月2日~5日、東京ビッグサイトで展示会「RETAIL TECH JAPAN 2004」が開催された(JAPAN SHOP 2004と併催)。未来の店頭をイメージした主催者ブース「Store Imagination 2009」を中心に、携帯電話やICタグを使った新技術や商品が紹介された。

 冒頭の「ナナコ」は、モバイル向けコンテンツ開発を手掛けるサイバードが、商品提案や売り場への顧客誘導用に開発したiアプリに登場するバーチャル・キャラクタである。主催者ブースで初披露した(写真1)。

 このiアプリは、カナダのベンチャー企業イナゴ(日本法人のWebサイト)のAI(人工知能)エンジンを搭載。客が入力した言葉に応じてAIエンジンが適切な商品を選択、ナナコが紹介する。例えば日本語で「パーティー用の服で、華やかなもの」と入力する。するとナナコは「春に似合う、桜色のロングドレスはいかがですか。本館7階にございます」と答える、といった具合だ。商品写真とともに店内マップを表示し、顧客を売り場へ誘導する。サイバードは同iアプリを、今年夏をめどにデパートなどの小売店に向けて提供開始する。

写真2●試着室で
ICタグ読み取り
 主催者ブースからほど近い先端情報工学研究所のブースに目を転じると、衣料店の試着室でICタグを使うデモが行われていた。室内の壁にICタグのリーダー/ライターを張り付けてある。顧客が持ち込んだ商品を壁のハンガーに掛ける際、商品のタグを読みとる(写真2)。

 試着室の一方の壁には液晶パネルがある。それぞれの商品は、色合いや単価に応じた「コンセプト・コード」であらかじめ分類しておく。顧客が試着室に持ち込んだ服の分類を基に、その服に似合う靴やバッグをここに表示することで、同時購買を誘う。

 店側は、POSレジでは把握できない購買前の履歴を試着室で収集し、品ぞろえや価格戦略の参考にできる。「よく試着されるが売れない服」を把握して、値下げを検討する、といったことが可能だ。

写真3●ICタグ・
キャビネットで漏えい防止
 主催者ブースでは、オフィスでのICタグ利用シーンも紹介された。日本信号は、ICタグを使った文書キャビネット「IS-Cabinet」を展示。夏をめどに発売する。内部犯行による情報流出を防止するのが目的だ(写真3)。

 それぞれの文書フォルダにはICタグが付けてあり、その格納位置はキャビネット内のリーダー/ライターと、外部に接続したパソコンで管理される。文書の閲覧を許可されたユーザーがパソコンに個人認証用のICカードをかざし、ファイル名などで文書を検索すると、キャビネットにある該当ファイルの位置を画面上に表示する。同時に、キャビネットの電子ロックを解除する。

 「あえて文書フォルダを整理せず、出し入れのたびにバラバラの順番に並べれば、どのフォルダがどこにあるかは見た目では分からない。よりセキュリティを高めることができる」という。

写真4●ICタグの内容
を出口で消去する
 主催者ブースの展示企画を担当したAuto-IDラボ・ジャパン副所長(実験・テストベッド)の羽田久一氏によれば、「参加各社に『神経質すぎる』と不評を買った」ほどプライバシに配慮したという。例えば、訪問者の個人情報を収集しない、人とモノの情報を関連付けない、模擬店舗の出口にICタグの内容を消去する装置(写真4)を設置する、などだ。

 「プライバシを侵害する可能性がある使い方は当面避けるべき。ICタグには、そのような用途をすべて捨て去っても、十分お釣りがくるほどの潜在的メリットがある」と羽田氏は強調する。

本間 純=日経コンピュータ