大日本印刷は、ビジネス文書などのデータを安全に保管できるストレージ・システム「TranC'ertDNA(トランザートディーエヌエー)」を開発した。「割符」のように分割した暗号データを3台のサーバーに分散させて管理するため、情報漏洩を防げる。3台のうち1台のサーバーが止まっても原本を復元できるため災害対策にもなる。特徴は、ユーザー認証やデータの暗号化にICカードを使う点。10月をメドに製品化する計画で、8月にもベータ版を提供するという。価格は、10ユーザー用で660万円程度になる見込み。

 TranC'ertDNAは、データを作成/編集するパソコン用のクライアント・ソフト、データを暗号化するサーバー・ソフト(PATH CONTROLLER)、保管サーバー用ソフトで構成される。クライアント・ソフトをインストールしたパソコンにICカード・リーダーを装備。ICカードを挿入すると、暗号化サーバーに接続してデータを保管できるようになる。

 ユーザーに必要な操作は、パソコン上でデータを作成し、暗号化用のフォルダに保存することだけ。暗号化用のフォルダは、TranC'ertクライアント上であらかじめ指定しておく。あとは、クライアント・ソフトが自動的にファイルを暗号化サーバーに転送。暗号化サーバーがデータを例えばA、B、Cの三つに分割し、それぞれを異なる暗号カギを使って暗号化する。さらに、AとB、BとC、AとCという3通りの組み合わせを作り、別々の保管サーバーに格納する。同時に、どのサーバーにどのファイルを保存したかをクライアントに返信。このデータはICカードに書き込まれる。

 データを取り出す場合も、パソコンのICカード・リーダーにICカードを挿入する。TranC'ertDNAクライアントは、ICカードに記録された保管サーバーのURLを自動的に読み取って、保管サーバーに接続。希望のファイルを選択すると、保管サーバーから三つのファイルを取り出し、暗号化サーバー上でファイルを復号化する。A、B、Cの三つがそろわないと復元できないため、個々のファイルを盗まれても解読される危険は小さい。また、3台のサーバーに分散させるため、1台のサーバーに障害が発生しても、2台が稼働していればデータを復元できる。

河井 保博=日経コンピュータ