三井生命保険は保険契約にかかわる事務作業全般を日本IBMに全面委託する。契約期間は今年4月から10年間。契約金額は10年間で360億円。三井生命は10年間で50億円のコスト削減効果を見込む。今回、三井生命が適用するのは、情報システム以外の業務そのものをITで変革するサービス「BTO(ビジネス・トランスフォーメーション・アウトソーシング)」。日本IBMによれば、日本で同社のBTOを本格的に導入したのは「今回の案件が第1号となる」。

 三井生命が日本IBMに委託する対象業務は、保険契約の変更や書類の送付、契約顧客からの問い合わせ応対など保険に関するバックオフィス業務のほぼすべて。コールセンター向けシステムの再構築や顧客情報管理基盤の整備、営業職員用携帯端末の機能強化、ネットワークの高速化、ワークフロー・システムの構築などにより、「コスト削減とサービス品質の向上を目指す」(三井生命)。

 保険事務の全面委託に伴い、三井生命と日本IBMは事務作業を手がける合弁会社「NBCカスタマー・サービス」を今年2月4日に設立した。資本金は1000万円で、出資比率は両社とも50%ずつ。三井生命の事務センターやコンタクト・センターで業務にあたる従業員1000人が、NBCカスタマー・サービスへ出向して事務作業を実施する。日本IBMからは20~30人の社員が出向、事務作業の効率化を支援する。

 今回の契約に先駆け、三井生命は2000年6月から情報システムの開発・保守・運用を日本IBMにアウトソーシングしている。10年間で1500億円という情報システムの案件に比べると金額では及ばないものの、システムに続き事務作業の全面委託にまで踏み切った背景には、三井生命が厳しい経営環境に置かれていることが挙げられる。同社の2003年度上期の保険料収入は前年同期比101.6%の4500億円だったが、経営の健全性を示す「ソルベンシー・マージン比率(支払い余力)」は502.5%と主要生保13社のなかで最も低かった。

 IBMは全世界でBTOサービスの展開に力を入れている。米国ではザ・プロクター・アンド・ギャンブル・カンパニー(P&G)から人事関連業務のBTOサービスを受注するといった実績がある。IBMは引き続き、情報システムのアウトソーシングを受け持つなど関係の深い顧客企業を中心に、BTOの案件獲得を目指す。

大和田 尚孝=日経コンピュータ