米サン・マイクロシステムズの
ウォルフガング・ゲンチ
グリッド・コンピューティング・ディレクタ

 「他社はグリッド・コンピューティングについての展望や戦略は語るが、製品を持っていない。当社はグリッドに必要なソフトウエアやソリューションを持っている」と米サン・マイクロシステムズのウォルフガング・ゲンチ グリッド・コンピューティング・ディレクタは語る。

 同社の製品には、グリッド・コンピューティングを実現するためのミドルウエア「Sun Grid Engine Enterprise Edition」がある。現行バージョンは5.3だが、5月にはユーティリティ・コンピューティングの機能を強化した「6.0」を発売する予定だ。

 同製品はすでに数百社に導入実績があり、日本でも松下電器産業など数十社が導入しているという。また同社は、製品からサービス管理やジョブ管理などの機能を除いた無償版「Sun Grid Engine」も提供している。無償版は8000以上のグリッド(主に部門レベルの小規模なグリッド)の構築に使われているという。同ソフトはSolarisとLinuxで動作するため「50%の顧客はサンのハードウエアでグリッドを構築しているが、50%は他社のハードウエアを使っている」(同氏)。

 サンは今後、グリッドをエンタープライズ向けソリューションとして展開していく計画だ。現在、すべての製品をグリッドに対応させる作業を進めているという。

 ゲンチ氏は「グリッドは顧客にとってのメリットが大きい」と顧客サービスの改善が第一の目的であることを強調する。グリッドの利点として、リソースの仮想化によりハードウエアではなくサービスやアプリケーションの開発に集中できる点、ネットワークを介してパートナやサプライヤとリソースを共有できる点、障害時のフェールオーバー、リソースの利用率の向上、生産性の向上などを挙げる。

 「コンセントに挿すだけで使える電力並みの手軽さでグリッドを利用できるようになるのはいつか」という質問に対しては、同氏は「5~10年はかかるだろう」と答えた。その実現に向けての課題には、「1.分散したリソースを接続する規格の標準化」、「2.セキュリティの確保」、「3.『自分のリソースの共有を他者に許す』いう利用者の発想の転換」の三つがあるという。

(大森 敏行=日経コンピュータ)