「サーバー統合はデータセンターのような大規模な場合だけでなく、2台を1台にまとめるような場合にもメリットがある」。仮想サーバー用ソフト「VMware ESX Server」を提供する米ヴイエムウェアのダイアン・グリーン社長/CEO(写真)は、「ESX Serverは大企業向けの製品では」との記者からの質問に強く反論した。

 ESX Serverは、Windows NTやWindows Server 2003、Red Hat LinuxやSuSE Linux、NetWareなど、様々なOSをIAサーバー上で同時に実行できる基盤ソフトである。これを利用すれば、各部門などでバラバラに保有するIAサーバーを1台のサーバーにまとめることができる。米国では約5000のユーザー企業が導入済みという。そのなかで、「ファイル・サーバーやプリント・サーバーを数台統合するためにESX Serverを採用したユーザー企業も多くいる」とグリーンCEOは強調する。

 小規模でも統合するメリットは何なのか。グリーンCEOは「ハードウエアのリソースをフル活用できること」を第一に挙げる。ESX Serverは、複数のOSをサーバー1台で動作させた上で、それぞれのOSに割り当てるCPU使用率など設定できる。そのため、リソースの余剰を小さく抑えられる。ハードウエアの低価格化がその効果に水を差すとしても「それでも効率的なことによるメリットはある」とグリーンCEOは強気の構えだ。

 さらに、サーバーの設置スペースを小さくできることや“プロビジョニング”の効果が高いことを挙げる。プロビジョニングとは、「まとめて管理・準備しておき、供給する」といった意味。リソース割り当ての設定変更が容易なため、サーバーを新規に購入せずに、必要になったとき必要な分がすぐに用意できるというメリットがある。また、「“サーバー・マシンごとに結ぶ保守契約などはサーバーが多いと手間がかかるから”と言うユーザーもいる」(グリーンCEO)という。これらのことが、規模にかかわらずメリットがあるというのだ。またグリーンCEOは同社のユーザー調査を基に「TCO(総所有コスト)を60%から85%削減できる」と説明する。

 しかし同製品の価格は、IAサーバーに比べて割高だ。販売パートナであるNECの販売価格は年間保守付きで74万4300円(2CPUのサーバーで動作させる場合)である。採用を考える上で、統合の効果が製品のコストに見合うかどうかがカギになる。

 また採用へのハードルとして、ESX ServerはIAサーバー上のOSだけに対応し、OSにHP-UXやAIXを用いたマシンを統合する機能はない点も挙げられる。一般的にDBサーバーやAPサーバーにはUNIXの利用がまだ多いが、そうしたサーバーの統合はできない。これに対しては「いま米国ではUNIXサーバーからIAサーバーへの大移動が始まっている」(グリーンCEO)と、状況の変化を見守る構えだ。

 サーバーを仮想化して効率よく利用する動きは、一般的にグリッド・コンピューティングやユーティリティ・コンピューティングなどのキーワードで語られている。ESX Serverは、複数のOSを1台のマシンで稼働できる点や、それらが障害時などで独立性を保つ点は、他の手法や製品と一線を画す。IAサーバー限定であることと、製品自体のコストの高さがクリアできるユーザーには有効な製品といえる。

森側 真一=日経コンピュータ