「当社は今年から、『スマートクライアント』の普及に力を入れていく」。マイクロソフト デベロッパーマーケティング本部デベロッパー製品部の熱海英樹シニアプロダクトマネージャはこう語る。背景には「企業情報システムではWebアプリケーションが広まった。だが、クライアント/サーバーに比べ操作性が低いことが開発の現場で問題になっている。かといって操作性を追求してクライアント/サーバー・システムに戻るのは、クライアントの配布管理など運用面で課題があるので現実的でない」(同氏)という現状がある。

 スマートクライアントは、マイクロソフトが提唱するリッチ・クライアントを実現するための技術。.NET FrameworkとWebサービスを組み合わせるのが大きな特徴だ。.NET Frameworkで稼働するクライアントがサーバーとWebサービスで通信する。同社同部の磯貝直之シニアプロダクトマネージャは「Windowsアプリケーションと同様の画面を持つクライアントを開発できるのでWebアプリケーションに比べて操作性は高い。クライアントはアプリケーションの配布機能を備える.NET Frameworkで動作するので、クライアント/サーバーで課題となったクライアント配布の煩雑さを解消できる」と説明する。

 スマートクライアントは、マイクロソフトが.NET Frameworkを発表して以来、提唱してきたもので目新しいものではない。だが、「Webアプリケーションの操作性に課題があるという認識が高まってきた今こそ、システムの特性に合わせたシステム形態を採用する必要がある。そこで、当社はスマートクライアントを、Webアプリケーションのインタフェース技術『ASP.NET』とともに普及させていきたい」と、熱海氏は意気込みを語る。

 スマートクライアントの普及促進策として、マイクロソフトは1月13日、システム・インテグレータやソフト・ベンダーに所属する開発者に向けた無料の支援プログラム「スマートクライアントアドバンテージ」を開始した。専用のWebページでユーザー登録すると、実行環境の.NET Frameworkや開発環境「Windowsフォーム」といった評価版ソフトを無償で送ってもらえる。マイクロソフトは2月中旬からソフトの配布を開始する予定だ。

 さらに同社のWebページから必要な技術情報を入手したり、eラーニング・サービスを受けられる。ただし、この支援プログラムを受けるにはソフト開発会社向けのコミュニティ「Microsoft Application Development Community 2004」にあらかじめ参加しておく必要がある。

西村 崇=日経コンピュータ