「今後、オフショア開発コストが上がるという懸念は無用だ」――。1月20日、米マイクロソフトの中国法人でCEO(最高経営責任者)を務める唐駿氏(写真右)は流ちょうな日本語で、中国でのオフショア開発に乗り出すよう促した。

 今回唐氏が来日したのは、マイクロソフト中国法人と上海市が合弁で設立したソフト開発会社、上海微創軟件(Shanghai Wicresoft)が日本企業からの受託開発事業に進出することを発表するため。開発工程の一部を中国人技術者が請け負う、いわゆるオフショア開発を手掛ける予定である。唐氏は上海微創軟件のCEOを兼任する。

 最近、上海市の人件費、オフィス代の高騰が伝えられ、オフショア開発を検討している日本企業の懸念材料となっている。しかし唐氏は「上海微創軟件は中国内陸部の人材とネットワークを築いたことで、開発費の上昇を抑制できる。優秀な人材が集まっており、品質も折り紙付きだ」と記者会見でアピールした。

 唐氏は名古屋大学で6年間学び、米国でマイクロソフト本社に入社。WindowsNTの製品開発に携わった後で上海に戻り、2002年中国法人のCEOに就任した。今回、上海微創軟件は日本側の窓口として、中国に進出する企業のコンサルティングを手掛けるジェー・シー・ディ(東京都台東区)と提携した。ジェー・シー・ディは本来、日本の携帯電話向けコンテンツの中国向け翻訳、配信を主力事業としており、両国のソフト業界の事情や規制に詳しい。

 唐氏とジェー・シー・ディの徐志敏社長(写真左)は名古屋大学の同級生の間柄である。「中国では米国のソフトばかり流通しているが、日本の良いソフトを発掘して中国に紹介したい」と意気投合したことが今回の提携のきっかけとなった。オフショア開発と並行して、日本の業務ソフトを中国語版にローカライズして販売していく計画だ。

本間 純=日経コンピュータ