写真1●北九州消防局の
出初め式で行進する「T-52 援竜」
 福岡県北九州市のロボット開発会社であるテムザックは1月11日、人間が乗って操縦するレスキュー・ロボット「T-52 援竜」を北九州市で公開した(写真1拡大表示])。写真で見てもわかる通り、援竜はまさに“モビルスーツ注)”。有名アニメのファンであれば武器のない“ガンタンク”、もっとマニアックな人は“ザクタンク”を思い浮かべるだろう。高さが3.45メートルで、テムザックの檜山康明社長室マネージャーは、「レスキュー・ロボットとしては世界最大級」と豪語する。

 援竜はまだ開発段階だが、単なる実験機ではなく商品化までを見据えている。「今年中にも実用化して、消防署や災害対策を行う企業や団体などに販売したい。商品化する場合の価格は5000万円くらいになるのではないか」(檜山マネージャー)。

 援竜を開発しているのは、福岡や京都などの産学官が結成した「防災ロボット開発会議」。設計・製作をテムザックが担当し、北九州市消防局、独立行政法人の消防研究所、京都大学の横小路泰義助教授などが協力している。

写真2●両“腕”を広げる援竜
 援竜は2本の腕を持ち、高さ3.45メートル、幅2.4メートル、重量約5トンと非常に巨大なロボット。左右の“腕”を開いた時のリーチは10メートルにもおよぶ(写真2拡大表示])。片腕500kg、両腕を使えば1トンの重量物を持つことが可能だ。

 これにより、災害時にガレキを撤去するといった作業ができる。「両腕があるのでブルドーザーやショベル・カーではできない細かな作業をしたり、大きい物体を持ち上げたりすることができる」(檜山マネージャー)。これだけ巨大なロボットを作るまでには相当の苦労があり、「最初のころに作った実験機では、ロボットが自分の腕を持ち上げるだけで精一杯だった」と檜山マネージャーは打ち明ける。

写真3●“コックピット”内に
操作用のモニターが見える
 頭部に2台、胴体部の前後左右に各1台、左右の腕に1台ずつと、合計7台のカメラがついている。“コックピット”には7台のモニターが設置されており(写真3拡大表示])、このモニターを見ながら操縦する。商品化までには、これらのカメラ画像と通信機器を使って、遠隔操作することができるようにする。

 檜山マネージャーは、「3月をメドに援竜を東京でお披露目したい」と意気込む。東京で“モビルスーツ”が見られる日も近い。

鈴木 孝知=日経コンピュータ

注) “モビルスーツ”は、アニメ「機動戦士ガンダム」シリーズに出てくる人型のロボット兵器の呼称。様々な種類があり、“ガンタンク”、“ザクタンク”はその一つ。