NTTドコモは2003年12月17日から2004年夏まで、ソニーの非接触型ICカード「FeliCa」機能を内蔵した携帯電話機を使った実証実験を行う(関連記事)。実験の名称は「iモードFeliCaプレビューサービス」。エーエム・ピーエム・ジャパン、ぴあ、東日本旅客鉄道(JR東日本)など27社が参加する(NTTドコモの発表資料参加企業リスト)。

 実験に使う携帯電話機は、今回のために試作した。NTTドコモが約5000台の端末を用意し、各参加企業に分配した。モニター・ユーザーの募集と携帯電話機の貸し出しは参加企業が受け持つ。12月15日に開催した発表会では、参加企業のうち半数あまりの企業が実験のデモンストレーションを行った(写真1~5)。例えば、コンビニエンス・ストア「am/pm」を運営するエーエム・ピーエム・ジャパンは、携帯電話機にiモードで電子マネー「Edy」をチャージし、これをレジ端末にかざして買い物の代金を支払う様子を披露した。

 複数の参加企業の担当者の意見をまとめると、実験を通じてクリアすべき課題は3つほどある。NTTドコモが「iモードFeliCa」を成功に導くためには、実験期間中にこれらの課題を解決する必要がある。

 一つ目は、携帯電話機のFeliCaチップが搭載するメモリーをどう有効活用するか、という点である。実験サービスを利用するには、あらかじめ、携帯電話機に各社のサービスに対応したFeliCaアプリケーションをインストールしておく必要がある。ところが、合計4Kバイトのメモリー領域のうち、ユーザーがアプリケーションをインストールできる領域は2Kバイト以下。1つのアプリケーションだけで0.7Kバイトを必要としている場合もある。実験参加企業がすべて本格サービスに移行する訳ではないが、参加企業の中には「それにしても30あまりの企業が共存できるのか」という声をいくつがある。

 二つ目の課題は、携帯電話が故障/紛失した時や、FeliCaアプリケーションを消去したい時に、電子マネーの金額情報などをどう保存するかだ。サーバーにバックアップを保存するなどの対策を取る必要があるだろう。

 三つ目は、読み取りの際の使い勝手の問題。携帯電話機は、ICカードに比べてぶ厚く電波を遮りやすい。現状のままでは、FeliCaの読み取り面が携帯電話機の表か裏か、ユーザーは常に意識して使う必要があり、便利とは言い難い一面がある。


写真1●全日本空輸(ANA)は、成田空港の国際線ターミナルにログイン用端末を設置する。iモードで座席を予約し、携帯電話機をこの端末にかざすと搭乗券を発券する。実験参加者は社員のみ


写真2●カラオケ機器を扱う第一興商は、2004年2月に立ち上げる会員制組織「club DAM MEMBERSHIP」で認証や課金にFeliCaとFeliCa搭載携帯電話機を使う。2004年6月には有料で歌唱力の採点サービスを開始する予定


写真3●日本コカコーラは、現在1000カ所に設置している、キャッシュレス購入対応の自動販売機「Cmode」にFeliCa対応機を加える。赤外線、2次元バーコード、FeliCaのいずれかで携帯電話機と通信する


写真4●ぴあは、電子チケット読み取り端末「デジゲート」をFeliCa対応にする。iモードで電子チケットを購入し、携帯電話機をコンサート会場のデジゲートにかざすと入場できる。なお、現在はNTTコミュニケーションズのICカード「セーフティパス」にのみ対応している


写真5●運行管理システムなどを手掛ける、三共システム工房は、携帯電話機を使ったバス用の電子チケットシステムを開発した。富士急行の東京~河口湖線などで実験する予定

(本間 純=日経コンピュータ)