日本IBMラショナル担当ジェネラル・マネジャのマイク・デブリン氏 「世界中を見渡しても、RUP(Rational Unified Process=ラショナル統一プロセス)で規定しているソフトウエア開発プロセスをすべて使っている企業など存在しない。エリクソンなら『E-RUP』、チャールズ・シュワブなら『Schwabe RUP』といった具合に、RUPの一部を選択し、それを自分なりにカスタマイズして使うというパターンが一般的だ」。米IBMでRUPやモデリング・ツール「Rose」、「XDE」などのラショナル関連事業を統括するマイク・デブリン ジェネラル・マネジャ(写真)はこのように説明する。

 RUPは、繰り返し型のソフトウエア開発手順(プロセス)として代表的なものの一つ。その一方で、「RUPは重すぎる。すべてを覚えるのは大変だ」という意見が出ている。これに対し、デブリン氏は「RUPはそもそも、多種多様な業種やビジネスのニーズにこたえられるよう、広い範囲をカバーしている。RUPのすべてを使おうなどと考えるべきではない」と話す。「まずRUPのなかで主要な2、3のプロセスを選んで、自社向けにカスタマイズし、ある程度定着したら『次はテストの部分もカバーしよう』などと広げていくほうが、スムーズに普及する」というのがデブリン氏の意見だ。

 「ユーザー企業だけでなく、システム・インテグレータにも同じことが言える」とデブリン氏。「CMM(能力成熟度モデル)を採用するシステム・インテグレータが、CMMをいかに導入するかに気を取られてしまい、プロセスの質を向上させるという肝心の目標を忘れてしまうという事例をよくみかける。同様に、RUPをできる限り忠実に採用しようとすると、プロセスの改善という側面がおろそかになってしまう恐れがある点に注意が必要だ」(デブリン氏)。

 RUPと同じく、モデリング言語のUML(統一モデリング言語)に関しても「すべてを利用しようなどと考える必要はない」とデブリン氏は強調する。「欧米の企業は日本よりもUMLの使い方は進んでいると思うが、それでもソフト開発の全工程でUMLを使っているわけではない。例えば、エリクソンはUMLを活用することで何百万ステップものプログラム・コードを自動生成しているが、それでも限られたビジネス・ドメインのなかでしか利用していない」(デブリン氏)。

 デブリン氏は、Roseなどのモデリング・ツールに関して、「少なくとも今後2年間は、我々は業界でナンバーワンのベンダーであり続ける」と自信を見せる。例えば、マイクロソフトは同社の製品である「Visio」のモデリング機能を強化しているが「少なくともあと2年は、我々に追いつけないだろう」とデブリン氏は踏んでいる。ただし、「マイクロソフトとは今後も密に連携していく。Javaだけでなく、.NET向けの製品は今後も販売・強化していくし、マイクロソフトの支援も受けていく」(デブリン氏)。

田中 淳=日経コンピュータ