ソニーや松下電器産業など家電メーカー、流通業者など19社が共同で、2004年2月からUHF帯のICタグを利用した実証実験を開始する。各メーカーが自社の家電製品にICタグを取り付け、工場や物流拠点、販売店舗で実用性を確かめる。950M~956MHzのUHF帯のICタグを使った実証実験は、日本初となる。

 実証実験は工場、物流拠点、販売店舗の3段階で行う。工場における実証実験では、各メーカーが自社の工場で「ICチップとアンテナを家電製品の基板内に一体化させる」、「ICチップのみを基板と一体化させ、アンテナは家電製品のロゴ部分に取り付ける」など、ICチップやアンテナの取り付け位置によって、読み取り精度がどれだけ変わるかを検証する。また、家電製品にICタグを取り付ける際にかかるコストも検証する予定だ。

 参加メーカー(対象予定製品)は、三洋電機(デジタル・カメラ)、シャープ(液晶テレビ)、ソニー(ノート・パソコン)、ダイキン工業(エアコン)、東芝家電製造(全自動洗濯機)、日本ビクター(デジタル・ビデオ・カメラ)、パイオニア(DVDプレーヤ)、日立製作所(液晶プロジェクタ)、松下電器産業(プラズマ・テレビ)、松下電工(照明器具)、三菱電機(冷蔵庫)の11社。

 物流拠点では、フォーク・リフトや台車を利用した検品作業の実証実験を行う。ゲートに取り付けたリーダー/ライターの向きや数、フォーク・リフトが通過する速度によって、UHF帯ICタグの読み取り精度がどのように変わるかを明らかにする。金属製の台車による干渉の度合いなども検証する。参加企業は、三洋電機ロジスティクス、ソニーサプライチェーンソリューション、松下ロジスティクスの3社。

 販売店舗における実証実験の実施店舗は、広島県内のデオデオの店舗を予定している。検証するポイントは三つ。一つは、検品作業の効率化の検証だ。既存のバーコードを用いた場合とUHF帯ICタグを用いた場合を比較する。第二に、レジにおける複数商品の一括読み取りの精度を検証する。第三に、顧客への商品の在庫情報や商品情報の提供を、ICタグを用いることでどれだけ素早く正確に提供できるかを検証する。参加企業はデオデオとPOSベンダーの東芝テック。

 これらの工場・物流拠点・販売店舗での実証実験を通じて、システム・ベンダーとしては日本アールエフソリューション東レインターナショナル日本インフォメーションシステムの3社も参加する。

 UHF帯を使ったICタグは、Suicaなどで利用されている13.56MHz帯のICタグよりも読み取り距離が長く、先ごろコンバースジャパンやハンティング ワールド ジャパンが採用を決めた2.45GHz帯のICタグよりも電波が物体の裏に回り込みやすい性質を持っている。そのため、物流業務の検品作業などに向くとされている。今まで日本のUHF帯は、携帯電話やMCA(マルチチャネル・アクセス)無線がほぼ占有していたが、KDDIが今年3月にPDC方式のサービスを停止したことで、950M~956MHzのUHF帯に空きができた。

(松浦 龍夫=日経コンピュータ)

 【訂正】 本記事の公開後、関係者から事実関係について指摘があり、第3段落の「(対象製品)」を「(対象予定製品)」に、第5段落の「広島県のデオデオ五日市店を予定」を「広島県内のデオデオの店舗を予定」に訂正しました。(2003.12.12)