米サイベースの
ジョン・チェンCEO

 「もはや、無線LANのセキュリティ上の問題は解決している。導入の壁になっているのは、ユーザーに刷り込まれた“無線LANは危険だ”という意識だ」。PDA(携帯情報端末)やノート・パソコンといったモバイル端末向けデータベース・ソフト最大手である米サイベースのジョン・チェン最高経営責任者(CEO)会長兼社長(写真)はこう語る。同社はモバイル端末向けのミドルウエアを強化しており、企業がモバイル端末と無線LANを使った業務遂行を支援する「Unwired Enterprise」という戦略を掲げている。

 チェンCEOは、「企業が無線LANを利用するのに必要な環境は、セキュリティ対策を含めて整った。来年は企業への無線LAN導入が加速する」と見ている。無線LANのセキュリティについて、「暗号化や本人確認のため機能などがすでに実用化されている。社内での利用はもちろん、VPN(実質的な専用線網)機能を使えばホット・スポット(公衆無線LANサービス)経由で社内システムを利用することも可能だ」という。

 「無線LANが広がると考える理由は、セキュリティ対策が充実したからだけではない」とチェンCEOは語る。「無線LAN技術の標準化が進んだことで使いやすくなり、かつ機器の価格が下がった。なにより、無線LANを導入してコスト削減やビジネスの拡張に成功した企業の事例が出てきたことで、他の企業も追随せざるを得なくなる」。

 チェンCEOは、「韓国の現代(ヒュンダイ)百貨店のように無線LANを使ったPOSシステムを導入することで、人件費を30%削減、機器コストを40%削減できた企業もある」という例を挙げ、「無線LANをうまく生かせば数百万ドルのコスト・メリットを出すことも可能だ」と主張する。

鈴木 孝知=日経コンピュータ