八十二銀行は、銀行システムにおける口座振替処理の負荷を分散できるソフトウエア特許の詳細を明らかにした。この特許は2003年9月12日に取得した「先日付完結処理システム及び方法」(第3471728号)で、口座振替の依頼に基づく引き落とし処理を指定日の最大10日前から処理できる。日によって処理量の偏りが大きい口座振替処理を平準化することで、処理遅延や人的ミスによるシステム・トラブルを防げる。システム資源の有効活用にもつながる。八十二銀行の普世芳孝執行役員システム部長は特許取得の目的について、「システム開発力をアピールするのと、発明内容の知的財産権を守る意味合いがある」と説明する。

 特許の対象となった機能はセンターカットの一種。従来は口座振替日の当日にバッチ処理で実施していた口座引き落としを、振替日の1~10日前にオンラインで実施する。システムの内部で10日先までの残高データを持つことで、前倒しの処理を可能にする。

 これにより、例えば処理が集中する25日付けの口座振替を23日や24日に実施できる。23日や24日の段階で、25日の残高から指定金額を差し引く処理を行えば、その口座振替処理を25日に実施しないで済むからだ。この場合、日付が25日に替わった瞬間に口座振替後の残高が有効になる。24日までの口座残高にはまったく影響がない。

 25日付けの口座振替を23日に事前処理した口座に対して、24日にATM(現金自動預け払い機)から引き出し処理があり残高不足で口座振替ができなくなったケースでも、残高の整合性は確保できる。引き出しのトランザクションをきっかけに25日の口座振替をいったん取り消すトランザクションを派生させるからだ。トランザクションの派生処理は、IBMのトランザクション処理ミドルウエア「IMS/SAIL」が持つ機能を使っている。

 八十二銀行によれば、「同様の方式で口座振替の完全な事前処理を実現している銀行はおそらくない」(普世執行役員)という。八十二銀行はすでに、今回の特許の機能を含む勘定系システムを地銀6行に提供している。「このほかにも、自己査定や印鑑照会など合計7件の特許を出願中」(同)だ。

 ピーク日に発生する大量の口座振替処理をいかに処理するかは、銀行にとって頭の痛い問題だ。ピークに備えてハードウエアを増強するとなればコストがかさむ。想定量を上回る依頼が舞い込めば処理の遅延や手作業のミスが起こる可能性がある。八十二銀行とは異なる方法だが、三井住友銀行とUFJ銀行も口座振替の業務を効率化するための新システムを共同開発している。

大和田 尚孝=日経コンピュータ