富士通は12月末から、システム運用管理ソフト群の新版「Systemwalker V11」を順次提供する。最大の目玉は「プロビジョニング」機能である。“仮想化した”サーバーを利用するために必要な準備および導入作業を支援する。

 プロビジョニングは、新製品の「Systemwalker Resource Coordinator」で実現する。処理の流れは以下のようになる。複数のサーバーで複数のWebアプリケーションを稼働させている際に、特定のアプリケーションにおける負荷が増大したとする。Systemwalkerはアプリケーション単位でレスポンスを計測し、その低下を運用管理者に通知。運用管理者はSystemwalkerの画面上で負荷量の変化を確認したうえで、OSやアプリケーションが全くインストールされていない「空白」のサーバー機に対して起動命令を送る。

 するとResource Coordinatorは、サーバー機に対してOSやアプリケーションのインストールおよび設定作業を自動的に行ったうえで、負荷が増大したアプリケーションの実行環境として利用可能にする。IPアドレスなどサーバー機固有の情報は個別に設定する必要があるものの、作業の多くを自動化するので、運用コストやサーバー導入の手間を大きく削減できる。富士通社内で実測したところ、「Resource Coordinatorを使うことで、サーバーの新規セットアップ時間を従来の約3分の1に減らすことができた」(鈴木恵司 ソフトウェア事業本部 運用管理ソフトウェア事業部長)。

 ただし、現時点でプロビジョニング機能を利用できるのは富士通製のブレード・サーバー機のみ。「今後APIを広く他社に公開し、来年の第二四半期(7月~9月)にも、他社製品を含めた混在環境にも適用できるようにする」(鈴木事業部長)予定だ。

 Systemwalker V11では、アプリケーション単位で負荷状況を確認できる機能も追加した。新製品の「Systemwalker Service Quality Coordinator」で実現する。プロビジョニングの際にもこの機能を使う。これまではWebサーバーやデータベースなど、Webアプリケーションを構成するサーバー単位でしか性能を把握できなかった。

 新田将人 ソフトウェア事業本部運用管理ソフトウェア事業部長代理は、「この業務アプリケーションの稼働状況はどうなっているのか、というエンドユーザーの視点で負荷状況を確認できる」と話す。そのうえで、アプリケーションを構成するWebサーバーやデーターベース・サーバーの処理速度など、より細かい単位にドリルダウンして確認できる。「サーバー運用管理のノウハウを投入し、問題の特定と解決に有用なサーバー情報の項目セットを用意した」(同)。

 このほか、従来製品であるSystemwalker Centric Managerの新バージョンで、パッチ適用作業を軽減させる機能を用意した。プロビジョニングの機能以外は、「他社製品を含めた混在環境で利用できる」(鈴木事業部長)としている。

 富士通は今後、他社製品への対応に加えて、アプリケーションとより密に連携するプロビジョニング機能の実現を目指していく。「今回実現したプロビジョニング機能は主に、フロントのWebサーバーを想定したもの。次のステップはアプリケーション・サーバーやデータベース・サーバーへの適用だ」(鈴木事業部長)。アプリケーションやデータベースの挙動をより細かく把握しないと、動的な切り替えは難しい。まず、同社のアプリケーション・サーバー・ソフト群である「Interstage」との連携を狙う。

 「今回のSystemwalkerで、ハードの自律・仮想化を実現するための枠組みはできた。しかしまだ決して(富士通のシステム・コンセプトである)TRIOLEで目指す姿には到達していない。今後はInterstageを含めて、よりシステム全体を動的に利用できる仕組みを整えていく」と棚倉 由行 ソフトウェア事業本部長は抱負を語る。

 Systemwalker Resource Coordinatorの価格は144万円から。出荷は2004年1月末。Systemwalker Service Quality Coordinatorの価格は84万円から。出荷は12月末。

高下 義弘=日経コンピュータ