全国の地方銀行64行は、取引先への融資が債務不履行(デフォルト)に陥る確率の予測を支援するシステムを共同開発する。64行が持つすべての取引先企業の財務データや倒産情報を集約してリスク分析のサンプル数を増やし、予測の精度を高めるのが狙い。来年秋の稼働を目指す。

 銀行は取引先に融資を行う際、貸し倒れのリスクを把握するために取引先を独自の指標で「格付け」する。格付けの結果に基づき、銀行は融資を実行する。

 新システムはこうした地銀の格付け業務の精度向上に役立つ。具体的には、地銀64行から取引先企業に関する財務情報を収集し、統計処理で貸し倒れの発生確率を計算する処理を繰り返す。サンプル数と計算回数を増やすことで、リスク分析の精度を高める。

 これまで地銀が単独でリスク定量化の計算をする場合、取引先のサンプル数が少なく適正なリスク定量化の指標を算出できないといった課題があった。新システムを使えば、地銀はリスク定量化に際して、他行の融資案件もシミュレーションのデータとして使うことができる。

 なお、取引先の情報を収集するのはリスク定量化の分析の基礎データとして使うのが目的であり、取引先にかかわる個別の財務情報などを地銀間で共有するわけではない。

 新システムは地銀64行が加盟する全国地方銀行協会がASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)方式で地銀64行に提供する。地銀64行はNTT東西地域会社が提供する1.5Mビット/秒のIP-VPNサービスを介して新システムにアクセスする。ハードウエアは日本ヒューレット・パッカードのIAサーバーを約70台採用。OSはLinux、データベースはOracle。新システムの開発・運用はNTTデータが担当する。

(大和田 尚孝=日経コンピュータ)