「中国政府や中国の通信キャリアは、IPv6の実用化に熱心に取り組んでいる。それも単なるアドレス枯渇問題対策で現行のIPv4から乗り換えるのでなく、通信インフラの完全な更改を図ろうという意志を感じる。中国のこうした動きに、日立は完全に同意する」---。日立製作所で情報・通信部門を統括する古川一夫・執行役常務は11月13日、訪問先の中国・北京市内のホテルで発言、中国国内でIPv6関連のネットワーク機器の販売に掛ける意気込みをあらわにした。
日立は11月12日から中国・北京市で開催されている無線通信関連の展示会「PT/WIRELESS & NETWORKS COMM CHINA 2003」会場で、通信速度10ギガビット/秒のIPv6対応ルーター「GR4000」シリーズを展示している。従来機の「GR2000」と合わせ、中国市場でIPv6対応ルーターを今後3年間で2000台販売すると、強気の目標を掲げる。
目標の達成について早川和夫・ネットワークソリューション事業部IPソリューションセンタ担当部長は「中国市場では今のところ、ルーターといえばシスコとのイメージが強く、(同社製品の)シェアも高い」と現状認識を示した上で続ける。「ならば日立はIPv6という新しい領域で中国市場に入り込む。すでに2002年から中国国内で実施中のIPv6の実証実験に参加しているし、固定系に強い通信キャリアである中国電信との共同研究も実施している。中国の通信業界では、すでに『IPv6=日立』という認知ができつつある」。
早川部長は中国の第3世代携帯電話(3G)の事情にも触れ、「今後敷設される3Gのバックボーンは、ゼロから新設する以上、当然IPネットワークになる。この市場は大きい」と語り、中国市場の攻略に自信を示した。
「当面はインフラ事業に注力、中国で携帯電話は売らない」
日立はこのほか、PHSの基地局やCDMA2000 1x EV-DO関連の無線通信設備などを中国市場で積極的に販売する計画を示している。
PHSは一時のブームが沈静化し、中国の通信業界全体が3Gに目を移しつつある状況だが、古川常務は「PHSと3Gは今後も共存していく」と予測する。
「日本は不幸にも携帯電話とPHSが同時期に立ち上がり競合してしまったが、中国では双方の良さを使い分けている。技術的にも日本でPHSサービスが立ち上がった当初から比べれば格段に進歩し、当時言われていたPHSのデメリットはほぼ解消されている」(古川常務)。
さらに古川常務は、「中国でPHSサービスを展開しているのは固定系の通信キャリアだ。このため構内交換機(PBX)、あるいはIPセントレックスのような新サービスとPHSを組み合わせたソリューションを法人ユーザーに提供できる」と語り、オフィス内PHSなど法人向けサービスも含め、中国のPHS市場に今後も期待できるとの立場を示した。
CDMA2000 1xに関しては「現在中国でCDMAサービスを展開するChina UniCom(中国連合通信)は、KDDIのCDMA2000 1x、そして11月末にサービス開始するCDMA2000 1x EV-DOの動向に注目しているだろう」(古川常務)とした上で、「日本ではEV-DO対応の携帯電話が爆発的に売れ、サービスが急速に普及すると見ている。中国でも同様にサービスが立ち上がることを期待している」(古川常務)と述べた。
ただし、同社は3Gに関して当面は通信設備に注力する考えだ。「日本では3G対応携帯電話も販売しているが、今のところ中国で携帯電話を発売する予定はない」(古川常務)と、中国における携帯電話端末市場への参入を明確に否定した。