写真●青果物トレーサビリティ・システム
「ベジトレース」の実証実験で、小売段階
で商品に張るラベルの例

 「ICタグが1個100円前後なのに対し、バーコードを印刷した紙は1枚1円程度。バーコードはトレーサビリティ・システムを実現させる上でもっとも現実的な手段だ」(NTTデータ法人ビジネス事業本部流通ビジネスユニットの後藤啓一課長代理)。

 NTTデータは2004年1月から、バーコードを使った青果物トレーサビリティ(生産履歴の追跡)システム「ベジトレース」の実証実験を始める。実験には、青果物の生産業者や卸売業者、小売業者、システム構築を担当するNTTデータ、プリンタやスキャナを開発するサトーなど計11社が参加。販売店舗は、東武ストアの高島平店と桶川店、横浜水信の横浜シャル店の3店舗。実験では、生産から流通までのトレーサビリティ・システムの問題点や、消費者の利用頻度などを確認する。

 今回の実証実験で用いる青果物は、高知県園芸農業協同組合連合会が生産するピーマンと、熊本県の松本農園が生産するにんじん。各生産者は、肥料や農薬の種類と量を毎日パソコンに入力し、NTTデータのセンター・サーバーに送る。出荷の際には該当するバーコードをケースに張る。

 次に、卸売業者では、バーコードを読み取るとともに、出荷先の小売業者と出荷量の情報をサーバーに送信する。

 最後に小売業者が、10ケタの番号が付いたラベルを商品に貼り付けて販売する。ケースに張ってあったバーコードとラベルの番号の情報は、サーバー側でひも付けしてある。消費者はラベルに表示しているサイトにパソコンからアクセスし、この番号を打ち込むと商品の生産履歴が見られる。実験では店舗にもパソコンを設置する予定だ。

 NTTデータ事業戦略部トレーサビリティ推進室の舘幸江室長は、「消費者は生産履歴を見ることで、安心して買うことができる。生産者は生産履歴を公開することで、他の商品と差別化を図ることができる。また、毎日生産履歴を入力することで、生産にかかるコスト計算や効率のよい生産方法の発見につながる」と青果物トレーサビリティ・システムのメリットを話す。

 NTTデータは実証実験を1カ月間続けた上で、来年度の実用化を目指している。

(松浦 龍夫=日経コンピュータ)