「従業員500人規模の中堅企業のERPパッケージ市場は、今後さらに激戦が待っている。当社の強みは“とりあえず動かせるモノ”があることだ」。勘定奉行シリーズなどの業務パッケージを手がけるオービックビジネスコンサルタント(OBC)の中山茂常務はこう語る。

 「とりあえず動かせる」というのは、中堅企業向け戦略を相次いで打ち出している、SAPジャパンや日本オラクルなど大手ERPベンダーの製品との比較。大手ベンダーのERPパッケージはプロトタイプを作るまでに作業が必要なためだ。OBCのERPパッケージは、もともと個別の業務ソフトとして開発されたものの集合体。そのため「すぐ動くだけでなく、小さく始めて徐々に広げていけることも強み」(中山常務)だという。

 ただし、OBCが中堅市場に本格的に打って出るのはまだ先だ。「当面のコア・ゾーンは30~200人規模の企業」と中山常務は説明する。「2005年に64ビットOS対応版の新ERPパッケージを出荷する。64ビットのパワーで大規模処理などの機能を追加できる。このとき他社の中堅企業向け製品とぶつかるだろう」(中山常務)。

 目下OBCが注力しているのは、コア・ゾーンである中小企業向けに利便性を高める機能の追加だ。例えば11月5日にUFJ銀行と共同で、融資審査を簡略化する機能を発表した。勘定奉行のユーザー企業はOBCのWebサイトからプログラム・モジュールを無償でダウンロードして、この新機能を追加できる。

 プログラム・モジュールをインストールすると勘定奉行の操作メニューに「融資相談」という項目が加わる。その後は対話形式の操作だけで、UFJ銀行に過去3期分の財務諸表をCSV形式で送ることができる。「UFJ銀行以外の銀行とも同様の連携ができるように、複数行と交渉中」と中山常務は説明する。

(矢口 竜太郎=日経コンピュータ)