日本IBM、エクサ、東京ガスの子会社であるティージー情報ネットワーク日進ソフトウエアの4社は共同で、グリッドとWebサービスの技術を組み合わせたシステムの構築実験を行った。IBMとパートナ企業が先進技術を使ってシステムを共同開発するプログラム「IBM jStart」の一環として、今年6~9月の3カ月間をかけ、グリッド技術が商用サービスで有効であることを確認した。

 基盤となるミドルウエアに、グリッド・コンピューティングの標準化団体であるGGF(グローバル・グリッド・フォーラム)が提供する「Globus Toolkit 3.0」を利用した。Globus Toolkit 3.0は、グリッドの標準規格「OGSA」に準拠しており、アプリケーションはWebサービスで通信する。OGSA規格とWebサービスを併用するシステムは前例がないという。

 今回4社が実験で構築したのは、仮想的な地域医療センターのシステムである。ここでは患者の電子カルテや検査画像などを仮想的に集中管理する。患者が近所の診療所で診察を受けるときに、過去に受診したほかの病院での診療履歴を地域医療センターに問い合わせて、検索、閲覧できる。

 電子カルテや検査画像などの実際のデータは、各病院に分散して保管されているが、診療所からは地域医療センターだけに問い合わせればよい。診療所や各病院と地域医療センターとは、インターネットで接続している想定で、Webサービスの仕組みでデータをやり取りする。さらに、グリッド・コンピューティング技術を使った画像変換システムにより、閲覧前に検査画像を自動変換する機能も持つ。

 実験に参加した日進ソフトウエアの佐藤一裕生産技術部Web技術推進課長は、「ミドルウエアのGlobus Toolkit 3.0に暗号化や認証の仕組みがあるので、設定ファイルを記述するだけで、簡単に開発できた」と評価する。

 実験に参加した4社は今後、顧客向けのシステム開発案件で、今回のノウハウを生かしていく。具体的な案件はまだ決まっていないが、複数の図書館を接続して書籍を検索するシステムや、複数の拠点にあるコンピュータを使って翻訳や経路検索、画像レンダリングなどを分散処理するような用途に利用できると見ている。

 日本IBMはこうしたシステムの普及に向けて、Globus Toolkit 3.0をベースにしたソフトを12月から販売する。Globus Toolkit 3.0に、インストーラ、J2EE実行環境を組み合わせたものを予定している。価格は未定。

(坂口 裕一=日経コンピュータ)