桂社長。「中国の3G商用
サービス、日本のように遅い
構築にはならない」と予測

(中国・北京市の長富宮飯店にて)

 「中国の第3世代携帯電話(3G)の商用サービスは、日本のようにタラタラと始まることはない。China Telecom(中国電信)やChina NetCom(中国網絡通信)など、2Gの商用サービスを持っていない固定系出身の通信キャリアが、China Mobile(中国移動通信)やChina UniCom(中国連合通信)に追いつこうと、すごい勢いで通信網を張り巡らせていくだろう」。パナソニック モバイルコミュニケーションズの桂靖雄社長(写真)は11月11日、訪問先の北京市内のホテルで日経BP社記者とのインタビューに応じ、中国国内の3Gサービスの今後についてこう予測を示した。

 中国の3Gの商用サービス開始時期は、2004年中とも2005年にずれ込むとも言われ、動向が不明確な状態が続いている。現在の準備状況について桂社長は「中国の電信研究院が実施しているW-CDMAの屋内接続試験には、11社/グループの無線通信設備が入っている」と説明。W-CDMAの商用化に向けた準備が順調に進んでいることを明らかにした。

 この接続試験には、欧米系はアルカテル、エリクソン、ノキア、モトローラなど、日本からはNECと松下、中国メーカーは華為と大唐が参加しているという。桂社長は「中国メーカーは、海外で実績がないのが弱みになる。中国政府当局が中国メーカーを優遇する可能性はあるものの、3Gの商用サービス展開で失敗はできない。実績を踏まえて導入するなら、外資系メーカーの無線通信設備も無視できないだろう」と指摘する。

 しかし桂社長は続けて「とは言え、中国メーカーの技術力も向上してきており、外資系と中国系の双方から無線通信設備を導入するのでは」と述べ、今後は中国系の通信機器メーカーとの競合も考えられるとの認識を示した。

 中国の3Gサービスでは、W-CDMA、CDMA 2000 1x、そして中国独自方式のTD-SCDMAの3種類の通信方式が並立し、どの通信方式が正式採用されるか不透明な状況にある。「TD-SCDMAは時分割多重方式(TDD)を採用しているという点でTD-CDMAと要素技術的には近いが、日本勢としては先行して商用サービスを実施しているW-CDMAの経験を生かすことが強みになる」と語った。パナソニックモバイルは11月6日に、3Gの通信機器の開発・製造で米UTスターコムと協業し新会社を設立したことを発表した(関連記事)が、新会社をW-CDMAに注力させる姿勢を改めて明確にした。

 またCDMA 2000 1xについて桂社長は「日本でKDDIグループの商用サービスが成功したのは、既存の通信網のしがらみがない、ピュアな3G通信網を築き上げることができたから。中国では現在、中国連合通信がCDMAの商用サービスを展開しており、CDMA 2000 1xの導入の可能性が最も高い。しかし同社は既存のGSM通信網も持っており、利用者数はGSMの方が圧倒的に多い状況だ。同社が仮にCDMA 2000 1xを導入するとなると、GSMの利用者をどうすればいいのか、扱いに苦しむだろう」との見方を示した。

金子 寛人=北京支局特派員