日本IBMは11月4日、サーバーの負荷が高くなると自動的にコンピュータ資源を追加するTivoliの新製品を発表・出荷した。特定システムのサーバーの負荷を監視し、必要に応じて空きサーバーの追加を指示する「Tivoli Intelligent ThinkDynamic Orchestrator」と、サーバー追加時に必要なソフトをインストール、設定する「Tivoli Provisioning Manager」である。今回出荷するのは英語版で、2004年上半期に日本語版を出荷する。

 新製品を利用した、資源追加の仕組みは以下の通り。まず、負荷の増加に合わせて資源を追加したいシステムを特定し、負荷のしきい値などを設定しておく。そのシステムのサーバーの負荷を監視し、しきい値を超えると、他のシステムなどで利用しているサーバーのなかから空いているものを探す。そのサーバーを転用するのに必要なソフトを自動的にインストールし、事前に決めておいた設定をして、追加サーバーとして動かす。発表会で行ったデモンストレーションでは、約7分程度でWebSphereのインストールと設定を完了した。

 この仕組みは、今年8月に開催されたテニスの世界大会「USオープン」の公式Webサイトで実際に利用した。Webサーバーは米IBMが管理しており、アクセスが増えたときには同社内で別の用途に利用していたサーバーを転用できたという。転用したサーバーは普段、米IBMのリサーチ部門でタンパク質合成シミュレーションに利用していたものだった。

 日本IBMの堀田一芙常務執行役員ソフトウェア事業担当は、「アクセスのピークに合わせて専用のサーバーを用意しておくのではなく、別の用途で利用していたサーバーを自由に転用できる。USオープンではIBM製のサーバーを転用したが、他社のサーバーでも可能。運用の自動化に向けて一歩踏み出した製品だ」とアピールする。

 ただし、この仕組みを利用するためには、サーバーを追加するときの判断基準(プロセサの負荷やメモリーの利用状況など)と、どのサーバーを追加するか、どういった手順でソフトウエアのインストール、設定をするか、ということを細かく定めておかなければならない。これが適切でなければ十分な効果を出すことはできない。

 さらに利用するソフトウエアによっては、インストールするためのライセンスをあらかじめ購入しておく必要がある。「IBM製ソフトウエアの場合は、プロセサやソフトの利用を日割りで計算して、課金するモデルも用意しており、オンデマンドの準備はできている」(日本IBMの伊藤かつらソフトウェア事業部クロスブランド事業推進プロジェクト推進部長)。

 価格は、Tivoli Intelligent ThinkDynamic OrchestratorとTivoli Provisioning Managerを合わせて、1プロセサあたり50万5600円から。動作OSは、Windows2000、AIX、Linux。

坂口 裕一=日経コンピュータ