富士電機は10月31日、温泉で利用する腕時計型ICタグの事例を発表、「管理コスト削減などの利点が明確になったので、今後用途を広げる提案をしたい」と語った。この発表では、藤田観光が経営する箱根の温泉施設「箱根小涌園ユネッサン」で使っているICタグを紹介した。温泉施設の入退場やロッカーの施錠、レストランの支払いなどに腕時計型のICタグ(写真)を利用する。

 ICタグに関する国際会議「スマート・ラベル・アジア会議2003」の壇上に立った富士電機リテイルシステムズ自動化機器事業本部通貨機器本部e-ビジネス部の川崎治夫次長は、「ユネッサンではICタグを2001年1月から使い始めており、メリットがあることは実証された。腕時計型のICタグは現在回収しているが、今後はそれを利用者に持ち帰ってもらい、会員カード代わりにする。そしてリピータになってもらう施策を打っていく」と語った。富士電機リテイルシステムズはユネッサンのICタグ関連システムを構築した。

 ユネッサンの施設内でICタグを利用することは、利用者とユネッサンの両方にメリットがある。利用者のメリットは財布を持ち歩かなくて済むことだ。施設内で利用者は水着を着用する。そのため、財布を持ち歩くのは不便であり、財布を紛失してしまう可能性もある。そこでこの腕時計型ICタグが活躍する。温泉の入退場やロッカーの施錠、レストランや土産物屋での支払いはすべてタグをリーダーにかざすだけで完了する。利用料金は施設を出るときに精算する。

 ユネッサン側のメリットも数多い。施設の利用料や食事、買い物の代金はすべてセンター・サーバーに集約されるので、売り上げの集計が容易になる。川崎次長は、「ビールなどの自動販売機内の在庫もリアルタイムで管理できるので、在庫切れを防ぐことができる」と説明する。使用中でないロッカーだけを選ぶことで、施設内に5000個もあるロッカーを効率的に清掃することも可能だ。

 使用する周波数帯は13.56MHz。データは書き換え可能で、メモリー容量は2KB。ソニーのFelicaをベースにアプリケーションを構築している。腕時計型ICタグは温泉内で利用するため、耐熱・耐水・耐塩水になっている。耐塩水は塩サウナがあるからだ。川崎次長は、「腕時計型ICタグを施設内だけでなく、他の箱根にある施設でも使えるようにしたい。小田急などの乗車券も兼ねられるようになっても面白いと思う」と講演の最後に述べた。

(松浦 龍夫=日経コンピュータ)