住商情報システムは10月23日、Web開発言語「Curl」の総販売代理店であるカール・アジアパシフィック(CAPC)ビジネスブレイン太田昭和から10月27日付で買収すると発表した。CAPCはこれまでビジネスブレイン太田昭和の100%子会社だったが、10月27日以降は住商情報の100%子会社になる。ビジネスブレイン太田昭和はCAPCのパートナとして、今後もCurl関連のビジネスを継続する。

 Curlは、米国防総省や米マサチューセッツ工科大学による共同研究から生まれたWeb向け開発言語。Webアプリケーションの構築に必要な様々なソフト開発を一つの言語で可能にすることや「リッチ・クライアント」を実現しやすい点が特徴。アプリケーションをサーバーからダウンロードし,実行時にコンパイルしてクライアント側で動かす形をとる。この点はJavaのアプレットと似ているが、アプレットよりもサイズが小さく、かつ機能が豊富なクライアント・アプリケーションを作れることを売り物にしている。

 ビジネスブレイン太田昭和は、Curlの開発元である米カール(Curl)と昨年8月末に提携してCAPCを設立した。CAPCは今年5月に日本語版を投入、親会社のビジネスブレイン太田昭和やクオリテックなどのパートナ企業とともに、Curlのビジネスを進めている。情報・通信関連ベンダーであるネクサスの経営情報ポータルなど、Curlによる開発事例も登場している。

 ただし、Curlはまだ本格的な普及には至っていない。Webの世界では数多くのデファクト・スタンダードが存在することやライセンス価格(開発環境が19万8000円、実行環境がサーバーあたり40万円(20ユーザー)から)がネックになっているほか、ビジネスブレイン太田昭和およびCAPCのプロモーションやサポートが不足していた点も影響したとみられる。今回の買収は、より本格的にCurlを普及したいと考えていた米カールと「リッチ・クライアント」に市場性があると判断した住商情報の利害が一致した。買収金額は明らかにしていない。

 住商情報システムは、同社の顧客ベースやSI(システム・インテグレーション)能力を生かしながら、Curlの普及を進めていく。日本だけでなく中国や韓国の市場も視野に入れる考え。CAPCのパートナであるクオリテックの福岡博文社長は、「CAPCが住商情報の傘下に入ったことは、Curl普及の追い風になる」と期待を寄せる。「Curlを評価する先進ユーザーがいる一方で、様子見のユーザーも数多い。住商情報が力を入れてCurlを普及させることで導入事例が増えれば、様子見のユーザーも採用してくれるようになるはずだ」(福岡社長)。

 CAPCの要員数は現在8人。CAPCの役割はCurlの販売や教育などで、Curlを使ったSI活動はパートナが担当する。今後3年で売り上げ50億円を目指す。Curlは現在Windows版のみで、来年1月にLinux版が登場する。

田中 淳=日経コンピュータ