「現在のところ、W-CDMAが日本や中国、欧州などを中心に、世界の主流になりつつある」。英ソニー・エリクソン・モバイル・コミュニケーションズでセールス・マーケティングを担当するジャン・エリック・ウェアビー(Jan Erik Wareby)上級副社長(写真)は10月21日、新製品の発表で訪れた中国・北京で日経BP社北京特派員と会見。第3世代携帯電話(3G)事業に関しては、NTTドコモのFOMAが採用するW-CDMA方式が優位との認識を示した。同社は今年6月、北米市場におけるCDMA事業(日本のKDDIが採用するCDMA2000方式)からの撤退を発表済み。ただし、同副社長は日本市場に関しては「CDMA2000方式でも事業を継続していく方針」としている。

 ウェアビー上級副社長発言とのやり取りは以下の通り。

――現在、中国では3Gの通信方式として、W-CDMA、CDMA2000 1x、そして中国の通信機器メーカーなどが独自に開発を進めるTD-SCDMAの3規格が並立している。ソニー・エリクソンはどのような方針で携帯電話の開発を進めるのか。
 「現在のところ、W-CDMAが日本や中国、欧州などを中心に、世界の主流になりつつあると判断している。現行の第2世代(2G)でGSM方式が普及してきた過程と同様に、当社はグローバル・スタンダードに沿って事業展開していくのを基本方針としている」。
 「とは言え、我々にとって中国市場は非常に重要な地位を占めている。TD-SCDMAをはじめとする他の通信方式に関しても、キャリア(通信事業者)などと緊密に連絡を取り、絶えず情報収集を進めていきたい」。
 「CDMA2000に関しては、今年6月に発表したリストラ策の一環として北米地域のCDMA事業からの撤退を決めている。ただし、日本のCDMA事業は今後も継続していく方針だ」。

「製品化は遅れているが、完成度で勝てる」

――今年2月に、初の3G対応携帯電話『Z1010』の開発意向を表明したが、出荷は始まったのか。
 「Z1010は、まだ量産出荷に至っていない。当初は今年末に量産出荷する予定だったが、量産出荷前のテスト項目が多く、時間がかかっている」。
 「3Gの通信方式だけを実装したシングル・モードの携帯電話を開発・出荷できる日本市場と異なり、中国や欧州など他の地域では3Gと既存のGSM方式の両方を実装する必要がある。こうした事情から、製品の構造が複雑になり開発に時間を要している」。
 「とは言え、製品開発のほぼ最終段階に来ている。出荷に当たってはキャリアとの協議も必要なので一概に言えないが、来年初めには出荷を始めたい」。

――今回発表した新製品はいずれも2GのGSM方式だ。他メーカーと比べて3Gビジネスの展開で後れを取っているのでは。
 「現在、競合が量産出荷している3G携帯電話はいずれも機能や性能が良くない。Z1010の設計やアプリケーションの完成度は高い。他社製品でZ1010に匹敵する製品はないと思っている」。

「正しい製品」を一つひとつ作るのが重要
――2年前の合弁会社発足から業績不振が続いていたが、今年第3四半期(7~9月期)にようやく黒字転換を果たした。
 「第3四半期は、非常に大きな成功を収めたと言えるだろう。日本市場ではSO505iが大きく売り上げを伸ばし、欧州やアジアのGSM市場ではT610/T618の売り上げが業績回復に貢献した」。
 「第3四半期と第4四半期を合計した下半期ベースでも、黒字を計上できると予測している。だが、あくまで第3四半期の好調さは特別だと認識している。第4四半期に第3四半期を上回る業績を達成できるとは限らない」。

――製品のラインアップに厚みがなく、個々の新製品の売り上げにより業績が大きく変動するという状況が続いている。
 「我々は多くの製品を発売するより、正しい製品、良い製品を一つひとつ開発し、世に送り出すことが重要だと考えている。そのために製品の設計やアプリケーションの開発にこだわっていきたい。我々としては現行のラインアップで満足できる水準と考えている」。

――現在中国では、携帯電話の生産過剰により値崩れが続いている。
 「市場全体としては価格押し下げの圧力があるものの、これまでのところ当社の製品は従来の価格水準を維持できている。設計や品質、機能に優れた面を持つ、良い携帯電話を開発、供給し続けることが重要と認識している」。

(聞き手は、金子 寛人=北京支局特派員