ISP(インターネット・サービス・プロバイダ)の運用支援を請け負うフリービットは、IPセントレックス・サービス「FreeBit OfficeOne(フリービット・オフィスワン)IPビジネスホン」を12月1日から開始する。「従業員が5~30人程度の小規模事業所でコスト・メリットが出るようにした、中小企業向け」(石田宏樹代表取締役社長 最高経営責任者)である。「内線番号などはWebブラウザから設定できるなど、ユーザー自らが簡単にできる」(同)のも特徴の一つである。

 IPセントレックス・サービスとは、通信事業者が提供するPBX(構内交換機)機能をIPネットワーク経由で利用できるようにすることで、ユーザー企業の社内にあるPBXをなくすことができるサービス。既存のIPセントレックス・サービスは数百~数千人程度の従業員がいる企業でなければコスト・メリットが出ないものが多く、中小企業では導入しにくかった。

 新サービスの利用料は「まだ正式には決定していないが、電話機5台の場合で、ISPの接続料を含めて月額5000円くらいからと考えている」(石田社長)。この料金の他に、アクセス回線としてNTT東西地域会社の「Bフレッツ」が必要になる。一般電話とも通話ができ、その場合の通話料は3分8円である。

 既存のIPセントレックス・サービスの場合は電話機1台あたり月額1000円程度で、通話料金もフリービットと同程度である。料金に差がないように見えるが、石田社長は、「他社のIPセントレックス・サービスだと、安価なBフレッツではなく高価な専用線やIP-VPNが必要になり、月額数十万円の負担がかかる。中小企業にとってこの負担は大きすぎる」と語る。インターネットを介することによる音声品質の劣化に対する不安が残るが、石田社長は「問題ない」と主張する。

岩崎通信機製のIX-6 IPKTDをカスタマイズした電話機 専用線が必要なくなった理由について石田社長は、「通信プロトコルにIPv6を採用した。IPv6のセキュリティ機能を利用することで、専用線が不要になった。またIPv6ではグローバルIPアドレスがふんだんに使えるため、IPv4でIP電話システムを構築する際に必要だったアドレス変換機能などがいらない。IPv6の方が機器コストや管理コストを低く抑えられる」と説明する。

 新サービスは内線通話や転送、保留、リダイヤル、複数台同時鳴動などの基本的なPBXの機能を提供する。「来年春には留守番電話サービス、ボイス・メール、着信拒否などの機能を追加する予定」(田中伸明副社長兼最高業務責任者)という。

ヤマハ製のRTV700 利用開始時にユーザー企業が購入する機器はIPv6対応のIP電話機(写真上・岩崎通信機製のIX-6 IPKTDをカスタマイズした電話機)とVoIPゲートウェイ(写真下・ヤマハ製のRTV700)である。価格はそれぞれ1台あたり3万円程度、17万8000円である。これらの機器のスペックは中小企業にあったものになっている。VoIPゲートウェイは最大24台まで電話機を接続できるが、それ以上の電話機を接続する場合にはVoIPゲートウェイをもう1台増設して利用する。その場合にはBフレッツ回線も1回線増やす必要がある。

 110や119のような100番台の番号に発信する場合や、「050」以外の「03-xxxx-xxxx」といった従来の電話番号で着信する場合には一般の電話回線を利用する必要がある。VoIPゲートウェイの一般電話回線の受け口が2回線分しかないので、「03-xxxx-xxxx」で電話がかかってきた場合、同時2通話しかできない。同時通話数を増やしたい場合にも、VoIPゲートウェイとBフレッツ回線を増設しなければならない。

鈴木 孝知=日経コンピュータ