NTTドコモは10月17日、携帯電話向けのウイルス対策ソフトを米ネットワークアソシエイツと共同開発していることを発表した。来年にもこのウイルス対策ソフトを携帯電話に実装する。当面は携帯電話に同ソフトを組み込んで提供するが、「将来はウイルス対策ソフトをダウンロード提供する可能性もある」(NTTドコモ)。

 ウイルス定義ファイルのアップデートは、無線通信を使ったソフト更新システム(通称:Airダウンロード)で行う。AirダウンロードはNTTドコモが10月10日に発表した、無線通信を使ってiモード対応携帯電話のソフトを更新する機能およびサービス。携帯電話に不具合が起きた際に新しいソフトをダウンロードしてその不具合を直す、といった用途に使える。Airダウンロード・サービスの提供開始は、「ウイルス対策ソフトの提供開始と同時期、もしくは必要があればそれよりも早い時期」(NTTドコモ)を計画している。

 NTTドコモがネットワークアソシエイツと組んで携帯電話向けウイルス対策ソフトを開発している背景には、携帯電話の利便性を今後より高めていきたいというドコモの思惑がある。現在の携帯電話はメーカー独自のOSを使い、ハードやソフトの設計も独自に進めている。だが、今後はOSの共通化やハードおよびソフト仕様の標準化、アプリケーションの高機能化などの取り組みが進むとみられる。「そうなると、悪意ある攻撃の対象になる可能性が高まる。利便性を高めるにはセキュリティ対策が不可欠になる」(NTTドコモ)。

 Airダウンロードを使って遠隔で故障を修理できれば、NTTドコモや携帯電話メーカーは携帯電話に不具合が発生した際の回収コストなどを減らせるというメリットも得られる。半面、外部から携帯電話のソフトを書き換えることが可能になるので、不正なプログラムが携帯電話の基本機能を操作する危険性が高まる。現在の携帯電話の仕様では、JavaVM(仮想マシン)上で動くiアプリから「電話をかける」、「メモリーを書き換える」といった携帯電話の基本機能を操作することはできない。そのため、「パソコンにあるようなウイルスや不正プログラムによる攻撃は事実上不可能」(同)

 ネットワークアソシエイツは、「McAfee」ブランドでウイルス対策ソフトを開発・販売している。ただし、今回の携帯電話向けウイルス対策ソフトはパソコン向けソフトを単に移植するわけではない。同ソフトの開発に携わっている日本ネットワークアソシエイツの須藤尚慶(たかのり)技術本部McAfeeラボ シニア・エンジニアは、「携帯電話用のウイルス対策技術は、プログラム容量の制限や検知する際の通信の仕組みなど、パソコンのウイルス対策ソフトとはかなり異なる」と話す。NTTドコモがネットワークアソシエイツは、この技術をITUなどの国際標準機関への提案することも検討している。

鈴木 孝知=日経コンピュータ