「ビジネスの変化に合わせて、システムを効率的に運用する体制を整えることで、IT予算を4割近く削減できた企業がある」。こう語るのは、米ヒューレット・パッカード(HP)のノラ・デンゼル シニア・バイス・プレジデントだ。デンゼル氏は、HP OpenViewをはじめとするソフトウェア・ビジネスを全世界規模で統括している。

 IT予算の4割近くを削減できている企業とは、オランダの半導体メーカー、フィリップス・セミコンダクタである。フィリップスは、HPのコンサルティング・サービスを2001年から受けることで、「現在、30パーセント後半まで、IT予算を削減できている。2004年には、45%を削減できる見込みだ」(デンゼル氏)。

 複数の半導体製品を製造しているフィリップスは、各半導体製品ごとにシステムを立ち上げてきた。それぞれのシステムは、メインフレームやWindowsサーバー、Linuxサーバーと異なっていた。これを、HPの運用管理ソフトであるHP OpenViewを使うことで、必要に応じてハード資源を自動配分する仕組みを整えた。ハードが不足しても、買い増しをせずに済むようにしたことなどが、ITコスト削減に貢献した。

 フィリップスのような効果を上げるためには、三つのステップを踏む必要があるとデンゼル氏は強調する。第1ステップは「ITスタビリティ」を確立すること。ITスタビリティとは、既存システムのリソースをすべてモニタリングして安定稼働させている状態を指す。「ITスタビリティの実現に合わせて、ユーザー企業にとって必要な技術やプロジェクトの重要度を判断したり、業務部門の要求にシステム部門が俊敏に対処できるかどうかを計測することも欠かせない」と、デンゼル氏は説明する。

 第2のステップは、「サービス・マネージメント」である。これを実現するには、システム部門がシステム利用部門に対して、サービスを提供していると考えて、システムを運用していくという体制作りが必要になる。最終段階が、「リアルタイム・ビジネス・アジリティ」。サービス・マネージメントをした上で、ビジネス・プロセスの変化に合わせ、システム・リソースを自動配分する状況だ。

 フィリップスは、リアルタイム・ビジネス・アジリティの段階にあるという。「サービス・マネジメントができているのは、企業全体の3割、リアルタイム・ビジネス・アジリティまでできているのは、企業全体の1割」と、デンゼル氏はみている。

(西村 崇=日経コンピュータ)